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 中大規模木造で、地元の製材をどう活用するか、CLT(直交集成板)の特性をどう引き出すか──。日経アーキテクチュア2021年8月12日号では、特集「部材調達で差をつける大型木造」を組みました。中大規模木造については18年から毎年1回、特集を掲載しており、4回目となります。昨今のウッドショックも踏まえ、今回は「部材調達」に焦点を当てて最新の事例を紹介しました。

(写真:鈴木 研一、吉田 誠、安川 千秋)
(写真:鈴木 研一、吉田 誠、安川 千秋)
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 特集の前書きを引用します。

 「庁舎をはじめ、中大規模木造の建設が進展し、新たなフェーズに入っている。発注者は、地元が求める木造建築をつくろうと、これまでにない課題を設計者に投げかける。地場産材を活用するだけでなく、建設後に木材供給や森づくりにつながる仕組みだ。なかには、木材事業者と設計者を木材コーディネーターがつなぐ例もある。設計者には、地域に特有な部材調達の流れを知り、設計に生かすことが求められる。立地や木材供給の条件が異なる3つの事例を通して、設計者の工夫を追った」

 特集で取り上げた「Entô(エントウ)」は、離島における中大規模木造の設計事例です。島根県海士町に21年7月に開業したホテルで、別館をCLTによる3層の木造で建てました。海士町は日本海の隠岐諸島に位置しています。本土で加工したCLTパネルを組み立てる工法を採用し、施工を効率化。杭のない木造建物とすることで、コンクリート使用量も抑えました。

 「資材調達や人材確保の難しい離島なので、本土で加工したCLTパネルを組み立てるプレハブ的な木造で設計した」。設計を手掛けたマウントフジアーキテクツスタジオ共同主宰の原田真宏氏は、背景についてこう語ります。

 「白鷹町まちづくり複合施設」(山形県白鷹町)は、林業の復興を目指して地域産材の活用を進めた事例です。設計者は環境デザイン研究所。役場と公民館、図書館が一体となった木造2階建ての施設で、延べ面積4500m2超。一般に流通する長さ4m以下、幅120mmの平角材を基本に設計し、木材使用量のうち75%で町産材を活用しました。町の木材生産能力に合わせ、無理のない緩やかな地産地消に挑みました。

 特集ではこのほか、設計者や木材関連団体などが早い段階から連携して、木材の地元調達率100%を達成した「木曽町役場」(長野県木曽町)の事例を掲載しています。各事例には「部材調達のポイント」の囲みの欄を設け、ポイントを分かりやすく解説しました。

 建築物の木材利用を巡っては、改正公共建築物等木材利用促進法が21年6月に成立しました。名称が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変わり、木材利用促進の対象が公共建築物だけでなく民間建築物を含む建築物一般に広がります。建築物の発注者を含む民間事業者・団体を支援し、民間建築物での木材利用を促すため、官民による協定制度も創設されます。法施行は21年10月です。

 こうした法制度の後押しもあり、設計者が大型木造を手掛ける機会は今後、さらに増えてくるでしょう。そのためには、まず材料調達の流れを知ることが肝心です。地域性を理解する第一歩となり、設計の出来栄えにも直結します。特集では、自治体や設計事務所向けに木材調達支援などを手掛けるNPO法人サウンドウッズの安田哲也代表理事のインタビューを掲載しています。木造建築物の設計で差をつけるための実務のヒントになると思います。ぜひご一読ください。