全955文字
PR

 東京五輪・パラリンピックの開催を機に、日本のトイレ空間が変わりつつあります。日経アーキテクチュア2021年8月26日号では、特集「トイレ設計の新常識」を組みました。五輪会場の事例などをリポートするとともに、設計のトレンドや注意点を解説しています。

様々な機能を盛り込んだ多機能トイレは、利用者が集中してしまい「肝心なときに使えない」という不満の声が上がっている。対策として、車椅子対応やオストメイト対応、乳幼児対応などの機能をできるだけ多くの便房に分散配置する工夫が必要になってくる(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
様々な機能を盛り込んだ多機能トイレは、利用者が集中してしまい「肝心なときに使えない」という不満の声が上がっている。対策として、車椅子対応やオストメイト対応、乳幼児対応などの機能をできるだけ多くの便房に分散配置する工夫が必要になってくる(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 特集で取り上げた事例の1つが国立競技場です。「世界最高のユニバーサルデザイン」を目標に掲げ、様々なタイプのトイレを整備しました。車椅子用トイレを車椅子席15席に1カ所以上の比率で設置。乳幼児用設備は一般用の男女トイレにそれぞれ設置するなど、一部のトイレに利用が集中しないように機能分散をしています。様々な利用者を想定し、男女共用トイレなども設けました。

 世界最高水準を実現するため、設計プロセスも工夫しました。障害者団体などからユニバーサルデザイン(UD)に関する要望を聞くワークショップ(WS)を設計チームが開催し、設計に反映していきました。UDWSは基本設計段階から施工段階まで計21回開き、トイレのモックアップも製作しました。改善した内容はトイレだけでも数百に達します。ここでの成果は、21年3月に国土交通省が改正した建築設計標準にも反映されました。東京五輪のレガシーの1つといえるのではないでしょうか。

 近年、利用者の満足度を高めるため、トイレの整備に力を入れる施設が増えています。一方で、ユニバーサルデザインへの意識の高まりなど、トイレに求められる機能は複雑化・高度化の一途をたどっています。設計者は、利用者の声や社会の要請に耳を傾け、誰もが使いやすいトイレの設計に取り組んでいく必要があるでしょう。

 特集ではこの他、東京都渋谷区で進行中の注目プロジェクト「THE TOKYO TOILET」も紹介しています。日本が世界に誇る「おもてなし」文化を公共トイレで表現するもので、著名な建築家やデザイナーが公共トイレのアイデアを提案しています。豊富な写真や図面で解説しており、これからのトイレ設計のヒントになると思います。

 また、日本トイレ協会会長の小林純子氏(設計事務所ゴンドラ代表)や、自分に合う個室を選べる新発想の「オルタナティブ・トイレ」を提案する永山祐子氏(永山祐子建築設計主宰)にトイレ設計のポイントを聞いています。こちらもぜひご一読ください。