全1036文字
PR

 日経アーキテクチュア2021年11月11日号の特集は「設計者も他人事じゃない 地盤の落とし穴」。斜面崩壊や擁壁崩壊、土石流など、昨今、社会的注目を集めた地盤にまつわるトラブルにフォーカスし、その後を追いかけました。

(写真:日経アーキテクチュア)
(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]

 特集で取り上げたトラブル事例の1つが、20年2月に神奈川県逗子市内で発生したマンション斜面崩壊事故です。敷地内の斜面が突如崩壊し、市道を歩いていた当時18歳の女子高生が60トン以上の土砂に巻き込まれて亡くなりました。この事故を巡っては、女子高生の遺族がマンションの管理会社や区分所有者を刑事告訴。民事訴訟でも区分所有者や管理組合、管理会社などを相手取り、損害賠償を求めています。

 一方で、遺族側に責任を追及される立場になった区分所有者と管理組合も、アクションを起こしました。21年4月にマンションの設計・監理者、売り主、販売代理店、管理会社を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起したのです。両訴訟の判決次第では、設計・監理者が多額の損害賠償を求められる可能性が出てきました。

 なぜ設計・監理者が訴えられたのか。本誌の取材で詳細が判明しました。詳しくは記事を読んでいただきたいのですが、鍵は「地質調査」にあります。地質調査会社が売り主に依頼されて実施した当時の調査では、崩落した斜面について「崩落地が数カ所存在している」「露岩部が風化によりクラッキーな状態」などと報告されていました。設計・監理者は「地質調査の内容を熟知しており、斜面の安全性を確保する義務があるにもかかわらず、十分な対策を講じずに設計・監理を進めた」として、不法行為責任を問われています。

 実は調査を巡るトラブルは、これだけではありません。特集では、松山市の地盤調査会社が起こした地盤調査報告書改ざん問題のその後も追いかけました。記事では、不正に作成された調査報告書を基に設計した住宅などが建築基準法に違反していた場合、建築士が行政処分や訴訟のリスクを負う恐れがあると指摘しています。トラブルを防ぐには、地盤調査を人任せにせず、建築士が積極的に関わっていくことが欠かせません。

 特集ではこのほか、大阪・西成の擁壁崩壊、静岡・熱海土石流などの事例を深掘りしています。近年、地盤や基礎を巡るトラブルが相次いで発生し、建築物の安全性に対する信頼を損なう問題となっています。地盤を巡る問題は、建築設計者とは無関係ではありません。地盤のリスクとどう向き合うか、今号の特集がそのきっかけになれば幸いです。