洗面台や机に塗った新素材「グラフェン」がセンサーとして働き、人が頻繁に触れて二次感染の恐れがある箇所をリアルタイムで明示する――。世界を震撼(しんかん)させている新型コロナウイルスの感染防止にも役立つ夢の新技術が、実現に向けて動き出した。
ソフトウエアの開発などを得意とするアステリア(東京・品川)は2020年2月14日、オーストラリアのイマジン(Imagine)への出資と、資本業務提携の契約の締結を発表した。出資額は50万ドル(約5000万円)だ。
グラフェンとは、炭素のみで構成された新素材。炭素原子が正六角形の格子を組む層でできたシート状の素材だ。炭素原子1個分という薄さで伸縮性を持ちながら、鋼鉄の100倍の強度を誇る。そのグラフェンを使って、世界で初めて導電繊維材を開発したのがイマジンだ。
壁紙やマットなどに使えば、そのままセンサーとして機能する。なお、グラフェンは繊維材以外に塗料に含ませて塗布することも可能だ。
他方、アステリアはAI(人工知能)を搭載したIoTエッジウエア「Gravio(グラビオ)」の技術を持っている。イマジンの表面センサーで得たデータを、クラウドを介さずに収集・処理して機器制御などにつなげる。
2社の業務提携によって開発が加速する新技術は、様々な用途が考えられる。洗面台やドアノブ、机などに塗っておけば、人が頻繁に触れた箇所を記録・可視化できるため、清掃員などにとって消毒・清掃の役に立つ。グラビオの機能によって、しきい値を超えれば掃除のアラートを出すことも可能になる。
AR(拡張現実)を使えば、触ると感染の恐れのある場所をリアルタイムで伝えられる。記者会見でアステリアの平野洋一郎社長は、「感染症の予防、防止の一助になれば」と話している。