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 JR西日本は山陽新幹線の走行中にラーメン高架橋の下で初めてドローンを飛ばし、橋の点検に適した機体の飛行安定性などを検証した。電波を受信しづらいといった飛行に影響を及ぼしやすい要因が多いラーメン高架橋では、撮影した画像から周囲の3次元形状を把握して自身の居場所を把握する「Visual SLAM」の機能を搭載したドローンが有用だと分かった。

山陽新幹線のラーメン高架橋の下で、ドローンの飛行安定性を検証している様子(ドローンは黄線の丸囲み内)。山口県内にある高架橋約1kmで実施した(写真:JR西日本)
山陽新幹線のラーメン高架橋の下で、ドローンの飛行安定性を検証している様子(ドローンは黄線の丸囲み内)。山口県内にある高架橋約1kmで実施した(写真:JR西日本)
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 JR西日本が管理する新幹線構造物のうち、橋梁の大部分を占めるのが、主桁と橋脚が剛結構造になっているラーメン高架橋だ。同社は連続する高架橋を下から安全に点検する手法の1つとしてドローンに注目。2020年1月に、複数のドローンを用いて高架橋下で飛行安定性などを検証した。

 一般的なドローンは飛行制御のため、様々なセンサーを搭載している。GNSS(衛星を用いた測位システムの総称)の受信機を使って位置情報を取得したり、赤外線センサーで障害物を検知したり、気圧センサーを使って高度を検出したりする。ただし、新幹線のラーメン高架橋では、これらのセンサーが利用できないリスクがあると指摘されていた。

 例えば、橋の下はGNSSの電波が届きにくいため、位置情報を取得しづらく制御が不能になる。ラーメン高架橋の形状も、汎用ドローンの使用を妨げる一因だ。断面方向の柱の間隔は5m程度と狭い。

 「衝突防止などのセンサーの効く範囲は半径2~3m程度なので、柱の間を飛ばすことが非常に難しかった」と、JR西日本構造技術室の野村倫一コンクリート構造担当課長は振り返る。横梁がある2層構造であれば、なおのこと難しい。

横梁がある2層構造のラーメン高架橋(写真:JR西日本)
横梁がある2層構造のラーメン高架橋(写真:JR西日本)
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 一方、高架下で安定した飛行を見せたのが、GNSSの電波が届かなくても自身の位置を把握できる「Visual SLAM」の技術を適用したドローンだ。ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW、東京・中央)が米スカイディオと共同で開発した「Skydio R2 for Japanese Inspection(J2)」を使った。

 機体に搭載したカメラが撮影する全方位の映像から、内蔵する人工知能(AI)が3次元地図を即座に作製し、自機と障害物との距離を計測する。ドローンが障害物に1m程度まで近づくと、ホバリングしたり飛行経路を変更したりして自動で衝突を避ける。検証当日は、かなり風が強かったにもかかわらず、「ラーメン高架橋の柱の間を飛んで、画像もぶれなく撮れていた」(野村担当課長)

ラーメン高架橋で汎用ドローンを飛ばした場合、センサーの範囲が構造物と干渉する(左)。Visual SLAMを使ったドローンの場合、自動で障害物を避ける機能を持ちながら柱の間を飛行できる(右)(資料:JR西日本)
ラーメン高架橋で汎用ドローンを飛ばした場合、センサーの範囲が構造物と干渉する(左)。Visual SLAMを使ったドローンの場合、自動で障害物を避ける機能を持ちながら柱の間を飛行できる(右)(資料:JR西日本)
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