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 コニカミノルタは、プレストレスト・コンクリート(PC)橋桁内にある鋼材の損傷を見つけ出す手持ち式の非破壊検査装置「SenrigaN(せんりがん)」を開発した。桁の下面や側面に押し当てて、鋼材に付与した磁場の変化を読み取る。複数の実橋で効果を確認し、本格的なサービス展開に着手した。

SenrigaNによる計測の様子。写真左の作業者が計測装置を桁の下面に当てている。それを右手前の作業者がタブレット端末で撮影し、オンラインで専門家の指示を仰ぐ。「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019」に採択され、調査・点検会社のSXR(香川県丸亀市)と共に福岡市のPC桁橋で効果を検証した。2020年7月に撮影(写真:コニカミノルタ)
SenrigaNによる計測の様子。写真左の作業者が計測装置を桁の下面に当てている。それを右手前の作業者がタブレット端末で撮影し、オンラインで専門家の指示を仰ぐ。「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019」に採択され、調査・点検会社のSXR(香川県丸亀市)と共に福岡市のPC桁橋で効果を検証した。2020年7月に撮影(写真:コニカミノルタ)
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 損傷の検知には、長さ70.5cm、幅20cm、厚さ9.2cmの計測装置とハンドル付き磁石の2つを使う。計測装置は重さ約3.4kg、磁石は4.3kg程度で、いずれも1人で扱える。磁石は、PC鋼材の直径やかぶり厚によって大きさなどを変える場合がある。

 SenrigaNの基本的な原理は次の通り。まずは、桁の下面や側面に磁石を当て、PC鋼材に磁気を帯びさせる。鋼材が破断している箇所では磁場に局所的な変化が生じるので、次に計測装置を当ててそれを磁気センサーで捉える。従来、PC鋼材の損傷を非破壊で見つけるには、大掛かりなX線装置などを現場に持ち込む必要があった。

 計測装置の操作は、両手で桁に押し当てたままスイッチを押すだけだ。1秒ほどで計測を終え、結果は無線でクラウドに転送。自動処理によって磁場の分布を示すグラフに変換され、約10秒後にはタブレット端末などで確認できる。鋼材の損傷箇所は、グラフの急変部などから点検者が判断する他、人工知能(AI)が自動で推測する機能もある。

沖縄県にあるプレテンション桁橋をSenrigaNで調査した結果。左の調査結果のグラフは、上から橋軸直角方向、橋軸方向、鉛直方向の各成分の磁場を表す。横軸は橋軸方向の距離で、縦軸は磁束密度を表す。なお、計測装置内のセンサーは橋軸直角方向に5列、高さ方向に2段配しているので、グラフは1成分につき10本ある。赤破線部のグラフの乱れから鋼材の損傷を読み取り、かぶりコンクリートをはつって確認したところ素線の破断が見つかった。赤破線部以外のグラフの乱れは、スターラップの影響など(資料:コニカミノルタ)
沖縄県にあるプレテンション桁橋をSenrigaNで調査した結果。左の調査結果のグラフは、上から橋軸直角方向、橋軸方向、鉛直方向の各成分の磁場を表す。横軸は橋軸方向の距離で、縦軸は磁束密度を表す。なお、計測装置内のセンサーは橋軸直角方向に5列、高さ方向に2段配しているので、グラフは1成分につき10本ある。赤破線部のグラフの乱れから鋼材の損傷を読み取り、かぶりコンクリートをはつって確認したところ素線の破断が見つかった。赤破線部以外のグラフの乱れは、スターラップの影響など(資料:コニカミノルタ)
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 計測方法は2つある。1つ目が一般にかぶり厚が大きく太径のPC鋼材を使うポストテンション桁に適用する「磁気ストリーム法」だ。この手法では、計測装置の隣で磁石を桁に当てたままスイッチを押す。磁場は鋼材が破断している箇所で急減するため、損傷位置を特定できる仕組みだ。地球の地場の影響を取り除くため、磁石を離した状態でも計測しておく。

 2つ目が「漏洩磁束法」だ。直径が15mmに満たないPC鋼材で緊張することが多いプレテンション桁で用いる。あらかじめ桁の表面に磁石を滑らせて鋼材を磁化(着磁)した後に、計測装置を桁に当てる。損傷や破断がない場合、着磁したPC鋼材の両端が磁極に変化し、全体が1つの磁石となって磁束線が発生する。一方、破断箇所の前後では複数の磁極が生まれて地場が乱れるので異常を検知できる。

PC鋼材の直径やかぶり深さによって計測方法を選ぶ。用いる機材は同じだ(資料:コニカミノルタ)
PC鋼材の直径やかぶり深さによって計測方法を選ぶ。用いる機材は同じだ(資料:コニカミノルタ)
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磁気ストリーム法では、磁場の急減を捉える(資料:コニカミノルタ)
磁気ストリーム法では、磁場の急減を捉える(資料:コニカミノルタ)
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漏洩磁束法では、破断箇所の磁場に特徴的な変化が生じる(資料:コニカミノルタ)
漏洩磁束法では、破断箇所の磁場に特徴的な変化が生じる(資料:コニカミノルタ)
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