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 鹿島は、測位衛星の電波が届かない山岳トンネルの坑内で、発破によって生じた土砂をすくって運搬する「ずり出し」の自動化を実現した。複数のレーザー送信機で無人のホイールローダーの位置情報を取得して制御する。同社が開発を進める山岳トンネルの自動化施工システム「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル・フォー・トンネル)」の要素技術として、実現場への投入を目指す。

模擬トンネルの切り羽付近で、ずりを模した土砂をすくい上げるホイールローダー。操縦席の上部に位置情報を受信するセンサーなどを搭載する(写真:鹿島)
模擬トンネルの切り羽付近で、ずりを模した土砂をすくい上げるホイールローダー。操縦席の上部に位置情報を受信するセンサーなどを搭載する(写真:鹿島)
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 2021年6月30日、鹿島が日本建設機械施工協会の施工技術総合研究所(静岡県富士市)に設けた実物大の模擬トンネルで試験運転の様子を公開。入り口から切り羽まで約40m走ってずりをすくい上げた後、バックしてホッパーに投入した。ずり出しは通常、1回の発破につき50回ほど繰り返す必要があるため自動化の恩恵が大きい。

 位置情報の取得に用いたのは、「iGPS」というリアルタイム測位システムだ。屋内に赤外線レーザーの送信機を張り巡らせて、三角測量の要領で受信機を追尾する。現在はカナダの7D Kinematic Metrology(キネマティック・メトロロジー)が保有する技術で、航空機工場で寸法計測などに用いる。計測精度に優れ、誤差が数ミリメートルに収まるのが特徴だ。1秒に20回ほど計測するため、対象が高速で動いても捕捉できる。

 模擬トンネルでの試験運転では、坑口と坑内にiGPSのレーザー送信機を2つずつ配置。コマツ製のホイールローダー「WA470」に受信機を搭載した。坑内では時速15~20kmで走行できる。

ホイールローダーがトンネル坑内に進入する様子。赤丸で囲んだのがiGPSのレーザー送信機。風雨に弱いため保護している(写真:日経クロステック)
ホイールローダーがトンネル坑内に進入する様子。赤丸で囲んだのがiGPSのレーザー送信機。風雨に弱いため保護している(写真:日経クロステック)
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 位置情報さえ得られれば、鹿島がダムの現場を中心に開発・導入してきたダンプトラックの自動運転技術などの応用が可能だ。オペレーターが指定したポイントを通過するようにシステムが自動で経路を生成し、ずりの位置まで走行する。

 ずりの位置情報は、切り羽付近で作業を補助するバックホーなどから伝える。ダム向けのクワッドアクセルでは実用化済みの技術で、ダンプトラックが荷下ろしした土砂の位置をブルドーザーに送信する例がある。

破砕機を模したホッパーにずりを投入する様子。実工事では通常、切り羽と破砕機が100mほど離れている。破砕後、ベルトコンベヤーで坑口まで運ぶ(写真:日経クロステック)
破砕機を模したホッパーにずりを投入する様子。実工事では通常、切り羽と破砕機が100mほど離れている。破砕後、ベルトコンベヤーで坑口まで運ぶ(写真:日経クロステック)
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