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理化学研究所とオリエンタル白石は、コンクリートをくりぬかずに内部に浸透した塩分の濃度や分布を計測する小型の非破壊検査装置「中性子塩分計RANS-μ(ランズ―マイクロ)」を共同で開発した。橋梁点検車のバケットに積んで橋桁などの調査に使い、塩害に対する予防保全につなげる。2023年度以降の実用化に向けて、22年度には実橋で検証する。
開発した装置は、自ら核分裂して中性子を放出するカリフォルニウム線源と、ガンマ線の検出器などで構成する。桁下などから中性子を照射すると、コンクリートに内在する塩素や水素といった元素と反応し、ガンマ線が発生。それを検出器で捉えてエネルギーなどを解析し、塩分の濃度や分布を計測する仕組みだ。
検証では、カリフォルニウム線源を厚さ1cmの鉛とポリエチレンで遮蔽した25cmの立方体の装置を製作。装置は中性子を放出するために、1カ所だけ穴を開けた。その装置で、コンクリート供試体の表面から3~6cmの深さに仕込んだ塩分の検出に成功した。ただし、検出できた濃度は1m3当たり3kgで、鉄筋の腐食が始まる濃度の同1.2kgより大きい。今後、装置の改良を進めて検出の精度を5倍以上に高める。
計測に要する時間は、塩分が存在する深さによって異なる。表面から3cm程度であれば15分以内。かぶりコンクリートの厚さで一般的な7cmの深さまで測る場合は、1時間以内に抑える予定だ。その間、中性子を当て続ける必要がある。1回の計測で、平均して縦横30cmの範囲を調査できる。実際の点検では、あらかじめ塩分が付着しやすい箇所を絞って計測する。