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 JR大分駅から延びる鉄道の高架化で生じた線路跡地に、レールを敷き詰めた「線路敷ボードウォーク広場」が完成した。(プロジェクトの概要は「線路デッキの『細長いタイムマシン』」を参照)。十分に予算がない中で、デザインの質を落とさずにプロジェクトを成功させた秘訣を探る。

「線路敷ボードウォーク広場」。長さ440m、幅員15~27mと細長い。大分市産のスギのデッキ材に古いレールを組み合わせた「線路デッキ」が特徴。写真は東側エリアの線路デッキだ。分岐した右側は展望デッキとなる(写真:イクマ サトシ)
「線路敷ボードウォーク広場」。長さ440m、幅員15~27mと細長い。大分市産のスギのデッキ材に古いレールを組み合わせた「線路デッキ」が特徴。写真は東側エリアの線路デッキだ。分岐した右側は展望デッキとなる(写真:イクマ サトシ)
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展望デッキからレールの先端が空へと突き抜けている。下部構造は鋼材と曲げ加工した新品のレールで構成する(写真:イクマ サトシ)
展望デッキからレールの先端が空へと突き抜けている。下部構造は鋼材と曲げ加工した新品のレールで構成する(写真:イクマ サトシ)
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線路敷ボードウォーク広場の一般図。大分市の資料を基に日経コンストラクションが作成
線路敷ボードウォーク広場の一般図。大分市の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 広場の骨格となるのは、ウッドデッキと古いレールを組み合わせた「線路デッキ」だ。大分の近代化を支えてきた線路の記憶を継承することを意図してデザインしている。

 市と二人三脚でプロジェクトの企画から施工監修まで深く携わった九州大学大学院の樋口明彦准教授は、次のように打ち明ける。「広場の東端には大友宗麟氏の遺跡がある。同氏が活躍した戦国時代と現代との時間軸をつなぐ「細長いタイムマシン」のような空間をつくることをイメージした。アニメ『銀河鉄道999』や、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンが進む線路のような、ノスタルジーのある風景を造りたいと考えた」

 特にこだわったのが、広場を構成する素材だ。プラスチックなどは使わず、木や鉄、石、レンガ、芝などの素材を中心に空間を構成することにした。

 ただし、そこでコストの壁が大きく立ちはだかる。予算は1m2当たり3万3000円。敷地の広さは1万m2なので、総工費3億3000万円に抑えなければならない。だが、採用する素材を基にコストをはじくと5億8000万円と2倍近くに膨らんだ。特にコストを押し上げた要因の1つが、スギを加工したデッキ材だ。ウッドデッキの腐食を防ぐために、あらかじめ工場で小分けにして防腐加工することにしていた。

 詳細設計を担当した西日本コンサルタント(大分市)設計第二部の田嶋亮太技師は、「予算内に抑えるために、単価の大きいデッキ空間を減らす必要があると考えた」と振り返る。まず、デッキ空間の面積を半分近くに見直し、線路のデッキの標準幅員を3mに縮小。代わりに、盛り土と樹木による「里山」の幅員を拡大した。里山はもともと、住宅街への目線を遮るために、広場の北側に配置することになっていた。

 樋口准教授は、「里山は子どもたちの遊び場になる。野鳥や昆虫が好む実のなる木を植えてあり、都市と周辺の自然環境をつなぐ『ビオコリドー』としても機能する」と話す。当初はデッキ仕上げとしていた2つの広場も、芝生で仕上げることにした。洪水時の想定水位よりも高さを上げることで、緊急時には防災広場として機能する。

西側エリア。線路デッキの標準幅員は3mとした。左のフェンスの足元にはツタ系の植物などを植えてある。フェンスは既製品だが、他に広場を構成する主要素のほとんどは特注品となった(写真:イクマ サトシ)
西側エリア。線路デッキの標準幅員は3mとした。左のフェンスの足元にはツタ系の植物などを植えてある。フェンスは既製品だが、他に広場を構成する主要素のほとんどは特注品となった(写真:イクマ サトシ)
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