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 山口県防府市で、歩車道を分離せずに視覚で誘導して自動車の速度を抑える「シェアドスペース」の手法を導入した街路が2019年9月に完成を迎え、隣接する街区も含めて道路修景整備が完了した。前編では道路を「広場のように使う」ために、工夫したポイントをお伝えする。

広場のような使い方に対応できる空間構成に

松崎地区の街路。歩車道は全面フラットで柵や縁石はない。街路全体が大きな広場のようなイメージでデザインした(写真:生田 将人)
松崎地区の街路。歩車道は全面フラットで柵や縁石はない。街路全体が大きな広場のようなイメージでデザインした(写真:生田 将人)
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松崎地区西側の「山頭火ふるさと館」(右)の前に、イベントなどで活用できる小広場を設けた。小広場を囲むように半円状に車止めを配置している(写真:生田 将人)
松崎地区西側の「山頭火ふるさと館」(右)の前に、イベントなどで活用できる小広場を設けた。小広場を囲むように半円状に車止めを配置している(写真:生田 将人)
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 歴史を生かした街づくりを進める防府市は2008~19年度、古くから栄えてきた旧山陽道と萩往還の重なる街道などで、修景整備を進めてきた(プロジェクトの概要は「幅16mの歩車道を全面フラット化」を参照)。

 2019年9月に完成した松崎地区で市が掲げた3つの整備目標は、「歴史を生かした防府の街づくりの顔となる空間」「歩行者優先の空間」「新たなにぎわいや観光拠点を提供する空間」を創出することだ。にぎわいを生むために期待したのが、イベントに使用できる街路造りだ。

 これに答えるように、様々な活動の舞台となり得る広いスペースが道路空間に誕生した。松崎地区をデザインしたイー・エー・ユー(東京・文京)の崎谷浩一郎代表は、次のように話す。

 「修景整備により歩車道の配分が見直され、車道部を縮めることで大きな余白空間が生まれた。実際は白い区画線の外側は路肩で、官民境界から路肩までは歩行者が通行するための路側帯となる。これらがフラットに、かつ同じ石張り舗装で連続することで、さも広場のような振る舞いをしている。いわば、路肩のイノベーションだ」(崎谷代表)

松崎地区の街路では、道路幅員は16mのまま歩車道の幅員構成を見直した。歩車道を全面フラットとし、歩行者空間の仕上げを車道の路肩まで連続させた。防府市の資料を基に日経コンストラクションが作成
松崎地区の街路では、道路幅員は16mのまま歩車道の幅員構成を見直した。歩車道を全面フラットとし、歩行者空間の仕上げを車道の路肩まで連続させた。防府市の資料を基に日経コンストラクションが作成
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 改修前は幅員4mだった北側の歩行者空間は、6mへと拡幅した。「十分な幅があるので、自動車を通行止めしなくてもイベントなど様々な形での活用が可能。テーブルやイスを置いても歩行者の動線を確保できる」(イー・エー・ユーの小笠原浩幸氏)

 さらに、広場のような使われ方を想定して、様々な仕掛けを用意した。歩車道を分離する植栽帯の中に配置したベンチは、日差しを遮るパラソルをすぐに設置できる穴を設けた。普段はパラソルを松崎地区の「まちの駅うめてらす」に保管している。

 3カ所に設けた横断防止柵は防府天満宮の祭事など、車両を通行止めにして道路全体を使う大掛かりなイベント時は、すぐに撤去できる仕組みとした。植栽帯にはボリュームのある生け垣ではなく、タマリュウなど高さのない植物を植えた。

ベンチはイベント時にパラソルが刺せる穴を用意した。普段は蓋で閉じてある。植栽帯にはタマリュウを植えた(写真:生田 将人)
ベンチはイベント時にパラソルが刺せる穴を用意した。普段は蓋で閉じてある。植栽帯にはタマリュウを植えた(写真:生田 将人)
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植栽帯に設置したベンチのような構造物は横断防止柵。道路空間を一体的に使うようなイベント時は撤去できる(写真:生田 将人)
植栽帯に設置したベンチのような構造物は横断防止柵。道路空間を一体的に使うようなイベント時は撤去できる(写真:生田 将人)
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