全1594文字
PR

 山口県防府市で、歩車道を分離せずに視覚で誘導して自動車の速度を抑える「シェアドスペース」の手法を導入した街路が2019年9月に完成を迎え、隣接する街区も含めて道路修景整備が完了した。プロジェクトの概要は「幅16mの歩車道を全面フラット化」で紹介している。後編では、街区の個性に合わせてデザインを変えた照明柱の設計秘話をお伝えする。

地区ごとの個性に応じた照明柱をデザイン

松崎地区。植栽帯の中にあるフットライトと、背丈のある照明柱が夜間に街路をともす(写真:生田 将人)
松崎地区。植栽帯の中にあるフットライトと、背丈のある照明柱が夜間に街路をともす(写真:生田 将人)
[画像のクリックで拡大表示]

 歴史を生かした街づくりを進める防府市は2008~19年度、古くから栄えてきた旧山陽道と萩往還の重なる街道などで、修景整備を進めてきた。

 市道新橋阿弥陀寺線の「松崎地区」「宮市地区」「国分寺・多々良地区」「今市地区」の4地区では、それぞれで異なる雰囲気の照明柱を見ることができる。道路と照明柱をデザインしたイー・エー・ユー(東京・文京)の崎谷浩一郎代表は、「防府は街ごとに人々の気質や土地の特性が異なる。それぞれの個性に応じた照明柱を設計しようと考えた」と話す。

旧山陽道と萩往還の重なる区間などを修景整備し、街の歴史的な資源を巡る回遊動線の形成を目指す。防府市の資料を基に日経コンストラクションが作成
旧山陽道と萩往還の重なる区間などを修景整備し、街の歴史的な資源を巡る回遊動線の形成を目指す。防府市の資料を基に日経コンストラクションが作成
[画像のクリックで拡大表示]

 「松崎地区」の街路は幅員16m。歩車道の境に柵や縁石はなく、全面がフラットな状態だ。防護柵の代わりに歩車道の境界に植栽帯を設けた。夜は植栽帯の中に立ち上がるフットライトが歩車道の境界をうっすらと浮かび上がらせる。85cmの高さから路面を直接照らし、運転手や歩行者から光源が見えないようにした。

松崎地区の街路の夜景。植栽帯の中にフットライトが見える(写真:生田 将人)
松崎地区の街路の夜景。植栽帯の中にフットライトが見える(写真:生田 将人)
[画像のクリックで拡大表示]

 照明柱については、灯具の平面形状を八角形とした。柱の上部は八角形の断面形状で、地面に近づくに連れて四角形へと変化していく。柱の上部にはバナー用のアームを、下部には通りや町名を記したサインプレートを取り付けてある。

松崎地区の街路の照明柱(写真:生田 将人)
松崎地区の街路の照明柱(写真:生田 将人)
[画像のクリックで拡大表示]

 イー・エー・ユーの小笠原浩幸氏は、照明柱のデザインについて次のように説明する。「松崎地区は防府天満宮のお膝元に位置する。天満宮の灯具は多角形や直方体の行灯(あんどん)型で、門前前の風格や華やかさを感じさせる。それらの形をヒントに、歴史ある防府の街づくりの顔にふさわしい灯具を意図した」と説明する。

 実際にデザインした形は100案近く。市や学識経験者で構成するデザイン策定委員会での検討を経て、現在の形が採用された。