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 「土手の上から水面を見るのと違う視点が新鮮だった」、「石垣の石に、運んだ人たちの藩の印が付いていた」、「水は濁っていたが、臭くはなかった。コイが泳いでいたし、野鳥も来ていた」――。東京・市ケ谷にある女子校、三輪田学園の高校生たちは、外濠(そとぼり)の水面に初めて降りた感想や発見を口々に語った。

 同校の有志チーム「外濠フレンズ」の約25人が参加したのは、この4月に開催された「外濠市民塾」の運営する学習会。法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科の福井恒明教授らの指導の下、同大学の保有するEボート(11人乗りの手漕ぎボート)で外濠の一部である新見附濠を航行し、水上から周辺を観察した。

新見附濠(東京都千代田区、新宿区)をEボートで調査する女子高生たち。ボートの漕ぎ手は外濠市民塾メンバーの大学生らが担った。画面奥に浚渫(しゅんせつ)工事用に敷設されたパイプが見える。土手側にはJR中央・総武線線の線路が通っている(写真:三上 美絵)
新見附濠(東京都千代田区、新宿区)をEボートで調査する女子高生たち。ボートの漕ぎ手は外濠市民塾メンバーの大学生らが担った。画面奥に浚渫(しゅんせつ)工事用に敷設されたパイプが見える。土手側にはJR中央・総武線線の線路が通っている(写真:三上 美絵)
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三輪田学園は新見附濠のすぐ脇に位置する。生徒たちは普段から新見附濠を見慣れているものの、水際に近づくのは初めて。「一般の人もボートに乗れるようにして、外濠の良い面、悪い面の両方を知ってほしい」と話す生徒もいた(写真:三上 美絵)
三輪田学園は新見附濠のすぐ脇に位置する。生徒たちは普段から新見附濠を見慣れているものの、水際に近づくのは初めて。「一般の人もボートに乗れるようにして、外濠の良い面、悪い面の両方を知ってほしい」と話す生徒もいた(写真:三上 美絵)
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 外濠市民塾は、法政大学エコ地域デザイン研究センターと大日本印刷ソーシャルイノベーション研究所が協働して運営する活動団体。外濠付近の住人や商店主、企業などと一緒に、知識を共有し、意見を交わすことで外濠の未来を考えることを目的とした活動だ。これまでに、周辺の街歩きや外濠で“昔の遊び”を体験するといった企画でワークショップを展開してきた。

 三輪田学園は法政大学と高大連携協定を結んでおり、一部の生徒は以前から市民塾に参加してきた。その活動が本格化したのは、2017年の秋から。学園祭で外濠についての研究発表をする参加者を募ったところ十数人が集まり、外濠フレンズを立ち上げた。

 自らこのチームの顧問を務める吉田珠美校長は「『大学生や大人と一緒に活動できて楽しい』と口コミでメンバーが増え、今年度の高校1年生も10人以上が加わった」と目を細める。同校はこうした外濠再生の活動を軸に、全国の女子高生による環境保全活動「Blue Earth Project」にも参加している。

新見附濠から持ち帰った水の成分を水質検査キットで調べた。アンモニウム態窒素やリン酸態リン、COD(化学的酸素要求量)などの数値はやや高めで、生活排水の流入や食べ物のカスなどの混入が認められ、浄化能力が失われていることが伺われた。一方で、硝酸態窒素や亜硝酸態窒素は少なめから通常の範囲だった。福井教授は「過去の調査でも、外濠の水質は季節や降雨後などの条件によって大きく変わることが分かっている」と説明(写真:三上 美絵)
新見附濠から持ち帰った水の成分を水質検査キットで調べた。アンモニウム態窒素やリン酸態リン、COD(化学的酸素要求量)などの数値はやや高めで、生活排水の流入や食べ物のカスなどの混入が認められ、浄化能力が失われていることが伺われた。一方で、硝酸態窒素や亜硝酸態窒素は少なめから通常の範囲だった。福井教授は「過去の調査でも、外濠の水質は季節や降雨後などの条件によって大きく変わることが分かっている」と説明(写真:三上 美絵)
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