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 東京の大改造ムーブメントに改めて拍車がかかったのが、2010年代。しかし、そこで開発コンセプトとして示される考え方や、創出しようとする機能に独自性を見いだしにくくなっている。特に、都市再⽣特別措置法(特措法)や国家戦略特別区域法の下、プロジェクト個別の最適解に関心が向かい、それぞれの連携や役割分担によって都市・エリアの個性をつくろうとする動きが表れにくくなっているのではないか。

「202X URBAN VISIONARY vol.2」の様子。登壇者は、齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)、豊田啓介氏(noiz共同主宰、gluon共同主宰)、田中陽明氏(春蒔プロジェクト代表取締役)、山口堪太郎氏(東急都市経営戦略室戦略企画グループ課長)、雨宮克也氏(三井不動産開発企画部開発企画グループ長兼環境創造グループ長)、金城敦彦氏(三菱地所開発推進部専任部長エリアマネジメント推進室)、杉山央氏(森ビルタウンマネジメント事業部新領域企画部)、山本恵久(日経アーキテクチュア/日経クロステック編集委員)(写真:北山宏一)
「202X URBAN VISIONARY vol.2」の様子。登壇者は、齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)、豊田啓介氏(noiz共同主宰、gluon共同主宰)、田中陽明氏(春蒔プロジェクト代表取締役)、山口堪太郎氏(東急都市経営戦略室戦略企画グループ課長)、雨宮克也氏(三井不動産開発企画部開発企画グループ長兼環境創造グループ長)、金城敦彦氏(三菱地所開発推進部専任部長エリアマネジメント推進室)、杉山央氏(森ビルタウンマネジメント事業部新領域企画部)、山本恵久(日経アーキテクチュア/日経クロステック編集委員)(写真:北山宏一)
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 本来の目的である、都市生活の質の向上や国際的な競争力の強化に向け、より俯瞰(ふかん)的な視野から、現在浮かび上がりつつある課題を克服する手立てがないものか。そうした問題意識から現在、都市開発に携わる建築家や複数のデベロッパーの開発担当者が顔を合わせて意見を交換し、既成概念にとらわれずに近未来のビジョンを描き出す場として「202X URBAN VISIONARY(202X アーバン ビジョナリー)」プロジェクトが継続展開されている。

 現在の東京大改造の在り方を検証するため、19年8月に開催された第2回「202X URBAN VISIONARY」のトークセッションから、各登壇者の考え方をピックアップする。「都市開発におけるコンセプトを俯瞰する」というテーマを設定したものだ。また近日、20年1月開催の第3回の議論の内容を紹介する予定だ。

田中陽明氏(春蒔プロジェクト代表取締役)(写真:北山宏一)
田中陽明氏(春蒔プロジェクト代表取締役)(写真:北山宏一)
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 「202X URBAN VISIONARY」プロジェクトは、現代の都市の在り方に強い関心を抱く齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)の呼び掛けによって生まれた。本シリーズの初回を企画し、ファシリテーターを務める田中陽明氏(春蒔プロジェクト代表取締役)は、「既成概念化された物事を打破するのはいつの時代もクリエーターの妄想、つまりビジョナリー(VISIONARY)ではないだろうか。そこで第一に、東京の大規模再開発の現状に対するクリエーターの問題提起から始まっている」と、第1回(19年4月開催)のトークセッションを振り返っている。

 第1回は、とりわけ特措法によって「プロジェクト(単独)主義」の都市再生が主流になっていった10年代の動向が、議論の焦点になった。一方で、先導的な都市計画マスタープランによってプロジェクトの位置づけを際立たせる観点が弱くなっている。以下に、各登壇者のコメントを掲載する。

齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)(写真:北山宏一)
齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)(写真:北山宏一)
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齋藤精一氏──「同じような街や建物をつくってお互いに戦うよりも、あらかじめ役割分担を見極めて協力体制をつくり、街同士で高め合う。各デベロッパーが、そうした意識を共有できないだろうか。それぞれのデベロッパーは本来、拠点とするエリアごとのテーマを持ち、開発に対する思想や哲学を持ち、その上に、実績や方程式を築いてきたはずだ。だからこそ、やるべきこと、実現できることはいったい何なのかを、この場で議論できればと思う。共創(共同的な創造)を進めるためには、お互いの役割を見直していく機会が大切だと考えている」

豊田啓介氏(noiz共同主宰、gluon共同主宰)(写真:北山宏一)
豊田啓介氏(noiz共同主宰、gluon共同主宰)(写真:北山宏一)
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豊田啓介氏(noiz共同主宰、gluon共同主宰)──「建築や都市開発に携わる人々はどちらかというと受け身で、『今の社会に対して私たちはこんな価値を提供できる』という姿勢が希薄なように感じる。大規模再開発では、既存の商店街や神社などを潰さざるを得ない場面もある。それらを乗り越えて街の新しいプラットフォームを生み出そうとするとき、自分たちはどんなふうに貢献するのか。将来に向け、どんな方針を立てるのか。広い視野を持ち、開発する建物やエリアの周辺にも利益をもたらし、社会全体で回る仕組みを考えるのがデベロッパーの重要な仕事ではないか」

 齋藤氏らが強調する一つは、容積率アップがインセンティブ(動機)となる「特区プロジェクト」によってハード偏重が起こり、結果的に多様な取り組みの機会が奪われているのではないか、というものだ。そこで、実際にどのようなコンセプトで街づくりに臨んでいるかを聞いてみたい、という趣旨から、各デベロッパーの開発担当者に発言してもらった。

杉山央氏(森ビルタウンマネジメント事業部新領域企画部)(写真:北山宏一)
杉山央氏(森ビルタウンマネジメント事業部新領域企画部)(写真:北山宏一)
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杉山央氏(森ビル タウンマネジメント事業部新領域企画部)──「森ビルは18年に『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』を東京・お台場に開業した。森ビルとチームラボが共同で事業組合を設立して運営に携わり、開業1周年時点では来館者約230万人を記録する大きな反響を呼び、周辺にも経済効果が及んだ。現在は、3棟の超高層棟や低層部からなる虎ノ門・麻布台プロジェクトが進行中だ。8.1万m2の敷地に多彩な都市機能を一体的に整備し、2.4万m2の緑地と融合を図る。人と人がつながる約6000m2の『みどりの広場』を中心に配置するために超高層タワーを建て、地上スペースを確保する計画手法を取っている。あくまで人を中心とする開発が、街にとって重要だと認識している」