全3692文字
PR

 東京をはじめ大都市における大規模再開発では、都市再⽣特別措置法(特措法)や国家戦略特別区域法の下、「都市貢献」によって容積率の割増を受ける仕組みに事業者の関心が向かっていった。しかし、都市貢献のメニューを増やそうとする結果、横並びの同質なものとなりかねない提案が表れる一面がある。では、ハードのボリュームに偏重しない「ポスト容積率」の価値観をいかに築き、いかに共有することができるのか。

「202X URBAN VISIONARY Vol.2」の様子。「都市開発におけるコンセプトを俯瞰する」をテーマに、大手デベロッパー4社の担当者とクリエーターが議論した(写真:北山宏一)
「202X URBAN VISIONARY Vol.2」の様子。「都市開発におけるコンセプトを俯瞰する」をテーマに、大手デベロッパー4社の担当者とクリエーターが議論した(写真:北山宏一)
[画像のクリックで拡大表示]
「202X URBAN VISIONARY vol.2」の様子。登壇者は、齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)、豊田啓介氏(noiz共同主宰、gluon共同主宰)、田中陽明氏(春蒔プロジェクト代表取締役)、山口堪太郎氏(東急都市経営戦略室戦略企画グループ課長)、雨宮克也氏(三井不動産開発企画部開発企画グループ長兼環境創造グループ長)、金城敦彦氏(三菱地所開発推進部専任部長エリアマネジメント推進室)、杉山央氏(森ビルタウンマネジメント事業部新領域企画部)、山本恵久(日経クロステック/日経アーキテクチュア編集委員)(写真:北山宏一)
「202X URBAN VISIONARY vol.2」の様子。登壇者は、齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)、豊田啓介氏(noiz共同主宰、gluon共同主宰)、田中陽明氏(春蒔プロジェクト代表取締役)、山口堪太郎氏(東急都市経営戦略室戦略企画グループ課長)、雨宮克也氏(三井不動産開発企画部開発企画グループ長兼環境創造グループ長)、金城敦彦氏(三菱地所開発推進部専任部長エリアマネジメント推進室)、杉山央氏(森ビルタウンマネジメント事業部新領域企画部)、山本恵久(日経クロステック/日経アーキテクチュア編集委員)(写真:北山宏一)
[画像のクリックで拡大表示]

[前編]
東京の大改造ビジョンをどう描くか、大手デベロッパー4社とクリエーターが議論

 前編では、トークセッション「202X URBAN VISIONARY」の内容を基に、主要デベロッパーが近年注力している街づくりの取り組みを紹介した。例に挙がった以外でも、個々の取り組みとしては街の特性を生かし、差別化を図ろうとしているプロジェクトであるのは間違いないはずだ。しかし、より広く全体を俯瞰してみると似通った面が浮かび上がるのはなぜか。

 齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)は、大規模再開発のコンセプト表現に用いられる言葉に明らかに同質化の傾向が現れていると指摘する。「グローバル」「〇〇の集積」「実験都市」「エンターテインメント」「インキュベーション」「SDGs」「MICE」などだ。

 例えば、東京に「もう一つの秋葉原」は必要ない。コンセプトの似ているエリアや建物をつくって人を取り合うのではなく、東京や日本における役割分担を前提に各社の協力体制を築くことはできないのか。エリア同士、デベロッパー同士が協調し、それぞれの街の個性を際立たせながら人を引き寄せるにはどうしたよいのか。これが「都市開発におけるコンセプトを俯瞰する」というテーマを掲げた理由でもある。トークセッションの後半では、エリアマネジメントなども含め、開発の各段階で情報共有の機会を持つことは可能か、という問いが投げ掛けられた。

齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)(写真:北山宏一)
齋藤精一氏(ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰)(写真:北山宏一)
[画像のクリックで拡大表示]

齋藤精一氏──「デベロッパーの側がホームタウンを持っているとしても、借り手の側は街を移り変わろうとするものだし、実際にはエリアの中でも開発主体が入り混じるので、箱庭的な開発で囲い込もうとしても無理がある。デベロッパー同士で、もっと開発の内容やノウハウを事前共有する機会を持つことはできないのか。対インバウンドの面でも有力な企業や人材の誘致の面でも、東京全体、また日本全体で個々の街、個々の都市の魅力を高める取り組みが求められる時代になっている。そのときに重要なのはエリアマネジメントではないか」

金城敦彦氏(三菱地所開発推進部専任部長エリアマネジメント推進室)(写真:北山宏一)
金城敦彦氏(三菱地所開発推進部専任部長エリアマネジメント推進室)(写真:北山宏一)
[画像のクリックで拡大表示]

金城敦彦氏(三菱地所開発推進部専任部長エリアマネジメント推進室)──「囲い込もうという考え方は既に余りなく、むしろ共有できている部分が増えてきたように思う。垣根を取り払った例として、当社が運営する三菱一号館美術館では、丸の内のみならず、京橋、日本橋といった近隣の他の美術館と連携して共通パス発行などの周遊施策を実施している。プロジェクトベースでも、皆で東京の街を盛り上げ、相乗効果を高めようという動きであれば協調しやすい。事前の情報開示に限界はあるが、開発者同士が意見交換する機会がもっとあれば、効果を発揮するかもしれない」

 ここで齋藤氏は改めて、「各社は、成功事例のノウハウも共有したほうがよい」と強調した。特に、容積率の割増をインセンティブとする開発に終始せず、例えば運用開始後のソフト、要はエリアマネジメントに関わる部分で公的な優遇を受け、それによって成功した体験が生まれ得るなら、フォーマットとして共有できるのが望ましい。