都市開発のなかで、エリアの魅力づくりに関係する大きな要素が「公共空間」の活用だ。特に成果が上がり始めているのが、水辺の活用。管理者が縦割りになるなどの課題を克服し、公民連携による注目事例が増え始めている。
官民一体で河川利用を推進するPRプロジェクト「ミズベリング」のディレクターとして、水辺活用の普及啓発をリードしてきた建築家、岩本唯史氏に、東京都内の注目10スポットを紹介してもらった。
東京の魅力を高める 「水辺利活用プロジェクト」10選
大型客船対応から小河川の舟運まで~インバウンド対応に欠かせぬ手段に
選者・コメント=岩本唯史/建築家、水辺総研代表、「ミズベリング」ディレクター
東京五輪・パラリンピック誘致の影響で湾岸エリアに開発機運が高まったことや、河川に対するそれまでの規制が2013年に緩和されたことなど、さまざまな民間投資を呼び込む官民連携事業が活発になった結果、水辺を舞台とする官民の開発意欲が活発になった。いよいよ目標としていた2020年を迎え、水辺のプロジェクト開業ラッシュを迎えている。
もともと東京は江戸時代から水の都だった。しかし、特に戦後の高度成長期に都市機能を高度化することを大目標に、治水や港湾機能に特化したインフラ投資がされてきた結果、水辺から都市環境の一部としての魅力が失われた。そのため、長い間東京の人々の生活からは縁遠くなっていた。近年、治水面での整備がほぼ完成し、水質改善も進んだことで、改めて河川敷の整備を魅力ある都市環境づくりの一環として捉える風潮が現れた。
さらに、時代を経て効率性を高めてきた結果、港湾機能はどんどん沖合に近い側に集中し、かつての湾岸倉庫群のエリアの都市化が進んだ。それも手伝って、都市環境としての水際の魅力づくりの機が熟してきた。
単に水辺にインフラを整備するだけでは魅力づくりにはならず、そこに人を誘引するサービスや事業が必要で、水辺における民間企業の事業創造の力が試されている。水辺での持続可能な開発や環境に配慮したプロジェクトも注目される。
いわもと ただし:1976年生まれ。早稲田大学大学院建築学修士課程修了。建築設計事務所「RaasDESIGN」を営みながら水辺をテーマに2004年から活動を始め、15年に水辺総研を設立。現在、河川利用PRプロジェクト「ミズベリング」ディレクター、「みんなの水辺新聞」編集長などを務める。2018年度グッドデザイン賞(ミズベリング)など受賞歴多数
[湾岸部]
天王洲地区(複数事業、品川区) ※( )内は施設の開業(予定)年、所在地
一帯の整備を推進する主体は寺田倉庫、天王洲運河ルネッサンス協議会ほか。20年以上にわたって水辺のまちづくりのリーダー的な場所。近年は水上の集落の様相を呈する。
Hi-NODE(ハイノード)(19年、港区)
事業主体はNREG東芝不動産、東京都ほか。「日の出ふ頭小型船ターミナル等整備計画」として、南側で進行中の「芝浦1丁目計画」の関連事業として進められた。東京都港湾局と民間による官民連携事業のパイロットモデルに位置づけられる。
ウォーターズ竹芝(20年、港区)
事業主体はJR東日本。ホテルを含む複合施設の開発に併せ、桟橋や干潟を整備。東京で待望された広場と水辺が一体になる場所。
東京国際クルーズターミナル(20年、江東区)
事業主体は東京都港湾局。クルーズ船の世界的なブームと巨大化に対応した新客船ターミナルが青海に開業する。ここからインバウンド客をどこに誘導するのかが注目される。