ファーストリテイリング傘下のユニクロは2020年6月19日、東京・銀座に日本最大のグローバル旗艦店「UNIQLO TOKYO(ユニクロトーキョー)」をオープンする。同店では、トータルクリエーティブディレクターをサムライ(東京・渋谷)の佐藤可士和氏が、デザインアーキテクトをスイスの建築家ユニットであるヘルツォーク&ド・ムーロン(以下、H&deM)が、それぞれ担当している。
UNIQLO TOKYOは、東京都中央区銀座3丁目にある商業施設「マロニエゲート銀座2」の低層部に入居した。建物は地下4階・地上7階建てで、そのうち地上1~4階を改修した。改修の実施設計と施工は、竹中工務店が担当。内装の実施設計と施工は、竹中工務店と乃村工芸社が分担している。
H&deMがユニクロの店舗をデザインするのは初となる。最大の特徴が店舗の中央部分、4フロアを貫く吹き抜けの大空間だ。既存施設の床スラブの一部を取り除くことで空間の連続性を生み出し、異なるフロアにいる人々の動きが視野に入るようにした。床の断面や、鉄筋の端などがそのまま現れている様は、建物の記録を見るようで面白い。
吹き抜けは、コンクリートの既存の梁(はり)や柱をむき出しにしている。梁底の一部は鏡張りとした。1階から見上げると、鏡に店内の様子が写り込んで不思議な感覚になる。
あらわとなった既存の梁と柱は「棚」のようなフレームを形成し、そのまま開けている場所もあれば、木製のショーケースや巨大なスクリーンをはめ込んだ場所もある。店舗デザインについてH&deMは、「旧来的な小売店内装の名残を取り除き、コンクリート躯体(くたい)の機能的な美とシンプルさを表に出すことで、本質的に回帰させた建築」だとコメントしている。
既存建物は1984年に、東京初のパリスタイルの百貨店として建設された。内部は同じつくりの店舗が回遊通路に沿って並び、売り場面積を最大化できるよう効率的に配置されたレイアウトだった。時代が変わり、H&deMはそうした平面計画を「特徴のない閉鎖的なショッピング環境」と捉え、高品質で機能的といったコンセプト「LifeWear」を体現するユニクロの店舗としてはそぐわないと考えたという。
とはいえ、既存建物に対する発見もあった。既存建物の図面を検証し、現場を訪れてから躯体コンクリートの美しさに気付いたのだ。躯体を見せるために、天井や床を大胆に取り除くと決めた。各フロアの梁の高さや天井高が同じであったことも、吹き抜け空間を設けるには好都合だった。
また、改修によって各フロアの天井高も高くした。改修前に約2.8mだった天井高(標準階)を、地上1階は約4.4m、2~4階は約3.6mへと変えている。そのために、もともと天井裏にあったダクトなどは、既存梁に穴を開けて通した。
H&deMは日本でこれまで、東京・青山にある「PRADA(プラダ)青山店」(2003年竣工)や、「MIU MIU(ミュウミュウ)青山店」(15年竣工)の店舗設計を手掛けてきた。この2つの仕事で同社は竹中工務店と協業した実績があり、UNIQLO TOKYOでも同じ組み合わせになった。