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 「何だ、この景色は!」。外側から眺めた様子と、内側に入って周りを見わたした景色が想像以上に違って見える。そんなパビリオンはここだけかもしれない。他のパビリオンに比べると、一見地味に思えるが、実は奥が深い。

半球型のお椀のようなパビリオンの内部(写真:北山 宏一)
半球型のお椀のようなパビリオンの内部(写真:北山 宏一)
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 建築家の平田晃久氏が設計したパビリオン「Global Bowl(グローバル ボウル)」は、木のパーツを100個組み合わせてつくった、大きなお椀(わん)のような形をしている。素材はカラマツの集成材を使っている。

平田晃久氏のパビリオン「Global Bowl」。高さは3m、横幅は6.7mある。木のお椀は見る方向や距離、時間帯で異なる表情を見せる(写真:北山 宏一)
平田晃久氏のパビリオン「Global Bowl」。高さは3m、横幅は6.7mある。木のお椀は見る方向や距離、時間帯で異なる表情を見せる(写真:北山 宏一)
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建築家の平田晃久氏(写真:パビリオン・トウキョウ2021)
建築家の平田晃久氏(写真:パビリオン・トウキョウ2021)
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 設置されているのは、東京・青山の国際連合大学前だ。旧こどもの城前にある藤原徹平氏のパビリオン「ストリート ガーデン シアター」と並ぶように立っている。両者はセットで見学するとよい。

 Global Bowlに行ったら、とにかく中に入ろう。恥ずかしがっていては、このパビリオンの楽しさや驚きを堪能できない。その点、子どもたちには遠慮がない。お椀に開いた無数の穴をくぐって中に入り、遊び回っている。

お椀の中で遊ぶ子どもたち。ただし、高い位置に上るのは危険なので禁止(写真:北山 宏一)
お椀の中で遊ぶ子どもたち。ただし、高い位置に上るのは危険なので禁止(写真:北山 宏一)
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子どもたちの目には、お椀の中から見た景色がどのように映っているのだろうか(写真:北山 宏一)
子どもたちの目には、お椀の中から見た景色がどのように映っているのだろうか(写真:北山 宏一)
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 都内9カ所に、著名な建築家やアーティストが手掛けるパビリオンを建てるプロジェクト「パビリオン・トウキョウ2021」が、2021年7月1日に始まった。東京五輪に合わせて文化面から東京を盛り上げるプログラム「Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13」の1つとして、東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、パビリオン・トウキョウ2021実行委員会が主催するイベントである。

 会期は21年7月1日から同年9月5日まで。企画はワタリウム美術館が担当した。参加するパビリオン・クリエーターは建築家の藤森照信氏、妹島和世氏、藤本壮介氏、平田晃久氏、石上純也氏、藤原徹平氏。さらにアーティストの会田誠氏と草間彌生氏である。また、真鍋大度氏およびRhizomatiksも特別参加している。

 藤原氏だけでなく、藤森氏と妹島氏のパビリオンは既に、このコラムで紹介済みだ。藤森氏の茶室パビリオンと真鍋氏の作品は、平田氏と藤原氏のパビリオンから頑張れば徒歩で行き来できる距離にある。渋谷方向に歩けば、草間氏の作品にも行ける。

 記者も中に入ってみた。するとダイナミックな空間が広がる。内と外では空間が反転し、別世界に迷い込んだような気持ちになる。

記者もお椀の中に入ってみた。木の香りがする(写真:北山 宏一)
記者もお椀の中に入ってみた。木の香りがする(写真:北山 宏一)
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内部は、外から見るのとは別世界だ。しかもかなり広く感じる(写真:北山 宏一)
内部は、外から見るのとは別世界だ。しかもかなり広く感じる(写真:北山 宏一)
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 お椀の中は、不思議な幾何学形状をしている。このパビリオンは、厚みがある木材をコンピューター制御で正確に3次元カットしてパーツをつくる、日本の最新技術を駆使した建築物なのだ。ねじれたような場所があったり、ある所は屋根になり別の所は椅子になったりする謎めいた空間になっている。

 「木という伝統的な素材を使いながら、現代のテクノロジーを使わないとできないつくり方に挑戦している」(平田氏)。それは、このパビリオン自体が「物として存在感があるものにもしたい」という、平田氏の思いが込められている。

ワタリウム美術館に展示されているパビリオン計画時の完成イメージと、集成材から切り出した木のパーツ(写真:日経クロステック)
ワタリウム美術館に展示されているパビリオン計画時の完成イメージと、集成材から切り出した木のパーツ(写真:日経クロステック)
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 それには「強さ」を感じられる仕上がりにしたい。「集成材は建材として強い方向がはっきりしている。構造的に強い方向に向くように、各パーツを切り出して組み合わせている。それが結果的に、お椀の模様のようにもなっている」(平田氏)。Global Bowlは世界の先端をいく「寄せ木細工」でもあるのだ。

集成材を3次元カットして組み合わせることで生まれる木の模様(写真:日経クロステック)
集成材を3次元カットして組み合わせることで生まれる木の模様(写真:日経クロステック)
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