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 美術家の荒川修作とマドリン・ギンズがデザインした「三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller」が、コロナ禍で苦境に立たされている。荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所(コーデノロジスト、東京都三鷹市)は2021年9月13日、大規模な修繕計画を実行するため、資金調達を目的としたクラウドファンディングを開始した。

「三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller」の外観(写真:Ken Kato、提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)
「三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller」の外観(写真:Ken Kato、提供:荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)
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 三鷹天命反転住宅は荒川修作とマドリン・ギンズがデザインした、9戸から成る集合住宅である。地上3階建てで、カラフルな外観で知られている。設計は安井建築設計事務所、施工は竹中工務店が担当した。構造は、壁式プレキャストコンクリート造だ。

 05年に竣工した住宅は、延べ面積が約760m2。一部を賃貸住宅として、他を教育・文化プログラムの発信スペースなどとして同事務所が管理運営してきた。

賃貸住戸の1室(写真:吉田 誠)
賃貸住戸の1室(写真:吉田 誠)
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 竣工から15年が経過し、20年には大掛かりな修繕計画を予定していた。三鷹天命反転住宅は建物の形状が特殊で、かつ14色を用いた塗装や全方向に設けた数多くのガラス窓を修繕するのに多額の費用が必要になる。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大で、イベントの中止、見学会や短期滞在プログラム(ショートステイ)の利用激減などが重なり、21年9月時点でも修繕計画を始められていない。計画の見直しもままならず、経済的に苦しい状況が続いているという。

 このままでは修繕が必要な箇所のダメージが広がり、三鷹天命反転住宅を体験する機会が失われていくと、同事務所は判断。三鷹天命反転住宅自身の「天命を反転させる(建物を守る)」ため、初めてクラウドファンディングを実施することを決めた。

 目標金額は1000万円。実施期間は、21年9月13日から同年12月10日まで。クラウドファンディングは、MotionGallery(東京・中央)が運営するプラットフォーム「MotionGallery」で行う。返礼品(リターン)は、見学会のチケットやドキュメンタリー映画のDVDなどを用意する。

 1000万円は建物の安全面から、今すぐ取り掛かるべき補修工事に必要な金額の半分に相当する。残り1000万円は自己資金で賄う。まずは劣化が激しい共用部(廊下・階段・梁・手すりなど)の耐火塗装や防水工事を行う。

 支援金額が1000万円を超えた場合は、ストレッチゴールを設定。3棟に分かれた住居棟全体の補修に充てる。コンクリート部分のクラックや表面の補修、塗装の塗り替え、開口部のシーリング打ち替えなどを補修工事に追加する。

 最終的には、建物全体の補修工事完了を目指す。全体補修工事の総額は想定で5500万円となっている。この金額は竹中工務店が20年7月に見積もった価格だ。