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 東急不動産と鹿島が東京都千代田区で進めている「九段南1丁目プロジェクト(仮称)」で、登録有形文化財である旧九段会館を一部保存しながら建て替える施設は2022年7月に竣工する予定である。それに先立ち両社は、築87年の旧九段会館部分の保存・復元工事が21年12月に完了すると発表した。大詰めを迎えるなか、21年10月29日には建物を持ち上げて免震装置を挿入する現場を報道陣に公開した。

2021年10月末時点で、登録有形文化財である旧九段会館を一部保存・復元する工事は最終段階を迎えている。旧九段会館は地下1階・地上4階建て、鉄骨鉄筋コンクリート造。設計は軍人会館建築事務所(意匠:川元良一、ホール音響:佐藤武夫、構造:田中正義)、施工は清水組(写真:東急不動産、鹿島)
2021年10月末時点で、登録有形文化財である旧九段会館を一部保存・復元する工事は最終段階を迎えている。旧九段会館は地下1階・地上4階建て、鉄骨鉄筋コンクリート造。設計は軍人会館建築事務所(意匠:川元良一、ホール音響:佐藤武夫、構造:田中正義)、施工は清水組(写真:東急不動産、鹿島)
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 建物は保存部分と高層の新築部分から成り、高さが約74.9mのビルに生まれ変わる。開業は22年7月以降で、同年10月ごろになる見通しだ。

21年10月末時点で建物の外観はほぼ完成している(写真:日経クロステック)
21年10月末時点で建物の外観はほぼ完成している(写真:日経クロステック)
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図の左側にある赤線で囲ったところが保存部分。保存部分と新築部分には境界をつくらず、一体化した建物にする。地下3階・地上17階建てになる(資料:東急不動産、鹿島)
図の左側にある赤線で囲ったところが保存部分。保存部分と新築部分には境界をつくらず、一体化した建物にする。地下3階・地上17階建てになる(資料:東急不動産、鹿島)
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保存部分の完成イメージ。帝冠様式が最もよく表れている建物の北側と東側をL字状に残す。正面玄関の前にはオープンスペースの広場「九段ひろば」を設ける(資料:東急不動産、鹿島)
保存部分の完成イメージ。帝冠様式が最もよく表れている建物の北側と東側をL字状に残す。正面玄関の前にはオープンスペースの広場「九段ひろば」を設ける(資料:東急不動産、鹿島)
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 保存・復元工事で一番大掛かりなものは、免震構造の導入だ。鹿島は「免震レトロフィット工法」を採用した。基礎付近に設置した免震装置で建物と地盤を分離し、地震が発生しても建物の揺れや被害を最小限に食い止める。今回は、地下1階の柱下部に免震装置を設置する「中間階免震」を選択。保存部分への影響を少なくしながら耐震性を高める。

 免震レトロフィット工法ではまず、仮設ジャッキで柱にかかる建物の荷重を受け替え、柱を切断して免震装置を挿入するスペースをつくる。そこに免震装置を設置。製品は主に鉛プラグ入り積層ゴム(ブリヂストン製)を使っている。最後にジャッキを外して工事完了だ。

免震レトロフィット工法の流れ。ジャッキアップ、柱(鉄骨)の切断、免震装置の挿入の順に施工する(資料:東急不動産、鹿島)
免震レトロフィット工法の流れ。ジャッキアップ、柱(鉄骨)の切断、免震装置の挿入の順に施工する(資料:東急不動産、鹿島)
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 地下1階部分の全ての柱に、免震装置を取り付ける。その代表的な場所が、建物の正面玄関になる大庇を支える4本の太い柱だ。工事中の現在は柱が宙に浮いているように見える。この柱には、免震装置として滑り支承を取り付ける。

施設の顔になる正面玄関の最前部を支える4本の柱は、免震化がまもなく完了する。玄関を抜けると、重厚な雰囲気のホールに出る(写真:日経クロステック)
施設の顔になる正面玄関の最前部を支える4本の柱は、免震化がまもなく完了する。玄関を抜けると、重厚な雰囲気のホールに出る(写真:日経クロステック)
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 鹿島東京建築支店の九段南1丁目プロジェクト(仮称)工事事務所の神山良知所長は、「ジャッキアップしている今が最も緊張する期間だ」と打ち明ける。免震工事で難しいのは、建物の傾きを抑えることである。ジャッキで支える柱と柱の間の傾きは2000分の1以下の勾配に抑えながら、工事を進める。これにより、この先60年以上の耐震性能を確保する。

柱の下部を切断し、中の鉄筋がむき出しになった状態の柱。柱の両側をジャッキで支えながら免震装置を取り付ける(写真:日経クロステック)
柱の下部を切断し、中の鉄筋がむき出しになった状態の柱。柱の両側をジャッキで支えながら免震装置を取り付ける(写真:日経クロステック)
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免震装置の挿入が完了した柱。今は掘り下げた基礎部分が露出しているが、ここは埋め戻し、柱は創建時とほぼ同じ高さ部分だけが見えるようになる。柱の仕上げに使う石材は保管してあり、免震装置を設置した箇所にスリットを設けて元に戻す(写真:日経クロステック)
免震装置の挿入が完了した柱。今は掘り下げた基礎部分が露出しているが、ここは埋め戻し、柱は創建時とほぼ同じ高さ部分だけが見えるようになる。柱の仕上げに使う石材は保管してあり、免震装置を設置した箇所にスリットを設けて元に戻す(写真:日経クロステック)
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