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 首都高速道路会社は、老朽化が著しい羽田トンネルを大規模更新する方針を固めた。2021年12月から3回にわたって有識者委員会で検討し、修繕では対応できないとの結論に達した。更新に当たって上下線を交互に通行止めにする必要が生じるため、隣接する可動橋を活用した新たな上り線の建設を検討する。

1998年から運用を停止している羽田可動橋。平行に海底を通る羽田トンネルの更新工事中に、迂回路として活用する検討が始まった(写真:日経クロステック)
1998年から運用を停止している羽田可動橋。平行に海底を通る羽田トンネルの更新工事中に、迂回路として活用する検討が始まった(写真:日経クロステック)
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 首都高は22年3月23日、羽田トンネルの天井裏に相当するダクト部を報道陣に初めて公開。劣化状況とともに、今後の大規模更新の方針などについて説明した。

 羽田トンネルは、羽田空港の西側に位置する全長300mの海底トンネルだ。1号羽田線の一部として1964年に供用を開始した。道路の海底トンネルとしては、58年に開通した国道2号の関門トンネルに次いで全国で2番目に古い。

 開削(延長計200m)、ケーソン(同50m)、沈埋(同50m)の3つの構造から成る。構造目地から海水の浸入が続く開削部の劣化が特に著しい。漏水の激しい箇所では、1分間に最大で10リットルの水がトンネル内に入り込む。漏水に伴う緊急補修のための車線規制が、2016年度は4カ月に1回の頻度だったが、21年度は1カ月に1回に高まっている。

2022年3月23日に報道機関を対象に実施した羽田トンネルの現地公開の様子。直径約57cmのマンホールから地下のトンネル内に入る(写真:日経クロステック)
2022年3月23日に報道機関を対象に実施した羽田トンネルの現地公開の様子。直径約57cmのマンホールから地下のトンネル内に入る(写真:日経クロステック)
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車道の上にあるダクトの内部。天井高は約1.2m。床に相当する中床版は著しく劣化し、あちこちでひび割れや剥離が生じている(写真:日経クロステック)
車道の上にあるダクトの内部。天井高は約1.2m。床に相当する中床版は著しく劣化し、あちこちでひび割れや剥離が生じている(写真:日経クロステック)
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目地部では止水構造が劣化し、海水の流入が続いている。トンネル周囲の躯体の厚さは0.9~1.3m(写真:日経クロステック)
目地部では止水構造が劣化し、海水の流入が続いている。トンネル周囲の躯体の厚さは0.9~1.3m(写真:日経クロステック)
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 車道部とダクト部を分ける厚さ30cmの中床版では、鉄筋が腐食して至る所でコンクリートの浮きや剥離が生じている。首都高では、これまでたびたび補修を繰り返してきたが、修繕では抜本的な改善は困難だと判断。中床版の造り直しを決めた。

 羽田トンネルは上下線それぞれ2車線で、両者の間は壁で仕切られている。中床版を再構築するには、上り線または下り線を交互に2車線ごと通行止めにする必要がある。そこで、上り線の迂回路として活用を検討しているのが、トンネルの西側に架かる羽田可動橋だ。

羽田トンネルと羽田可動橋の断面イメージ
羽田トンネルと羽田可動橋の断面イメージ
可動橋を活用して新たな上り線を建設し、中床版の再構築工事中に迂回路として活用する考えだ。新たな上り線の車線数などは未定。首都高速道路会社の資料と取材を基に日経クロステックが作成
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