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東京都渋谷区の渋谷駅周辺エリアで最大級の規模となる、区域面積約2.9万m2の再開発が始動する。東京建物は2022年3月24日、現在進行中の渋谷2丁目西地区再開発(渋谷二丁目プロジェクト)の都市計画決定を発表した。「Shibuya REGENERATION Project」(シブヤ・リジェネレーション・プロジェクト)と名付けて推進し、29年度の完成を目指す。
東京建物と渋谷二丁目西地区市街地再開発準備組合は21年6月、都市再生特別地区の都市計画提案を行い、内閣府がその概要を公表していた(提案資料は都市再生機構との連名)。これが国家戦略特別区域の特定事業として認定を受け、3月24日付で東京都および渋谷区が都市計画決定を告示した。
計画建物。北側の青山通りから渋谷方面を望んだイメージ。右手からA、B、Cの街区の建物が並ぶ。東京建物は、A・B街区における再開発の地権者の一員および事業協力者として、また、C街区における共同建て替えの地権者として、事業の推進を支援する(資料:東京建物)
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青山通りから望んだA街区のイメージ。店舗などの入る建物の上を「上空広場」とする(資料:東京建物)
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宮益坂上交差点越しに渋谷方面を望んだ現況。正面が渋谷2丁目西地区再開発A街区の計画地、青山通りを挟んで左手が同B街区の計画地。右奥は宮益坂。交差点右側(美竹通り)を進むと渋谷1丁目地区共同開発事業の計画地やMIYASHITA PARKに至る(写真:日経クロステック)
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プロジェクトの方向付けとしてのRegenerative。「Shibuya REGENERATION Project」の目指すRegenerationとは、「生成、原動力、世代」 といった意味を持つ“Generation”に、「再び、繰り返す」を表す“Re-”を付けた造語。Sustainable(持続可能性)の次のキーワードとされるRegenerative(再生的、繁栄的)を意識したものだ。プロジェクトの呼び名には「今まで誰も見たことのない、新しい『シブヤ』を生み出し続ける」との思いを込めたという(資料:東京建物)
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同プロジェクトは、渋谷駅の東側に所在する3街区の事業で構成される。敷地面積約1700m2のA街区と同約1万2800m2のB街区における再開発事業、および同約4300m2のC街区における任意の共同建て替え事業の3つで、総延べ面積は約32万2200m2に及ぶ。
ちなみに、東急、JR東日本、東京メトロが渋谷駅直上で進める渋谷スクランブルスクエア(第2期は27年度完成予定)の総延べ面積は約27万6000m2。東急不動産が参画し、同駅南西部で進める渋谷駅桜丘口地区再開発(23年度完成予定)の総延べ面積は約25万4800m2。渋谷二丁目プロジェクトは、これらを上回る規模となる。
整備平面イメージ(資料:東京建物)
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整備断面イメージ(資料:東京建物)
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A街区は宮益坂を上った場所に位置し、南東側は青山通り(国道246号)に面する。12年開業の渋谷ヒカリエ(延べ面積約14万4000m2)と接する格好になる。B街区は、北西側で青山通り、南側で六本木通りに面し、C街区も南側で六本木通りに面する。街区間を結ぶデッキなどの整備により、渋谷駅東口エリアの歩行者ネットワークや回遊性の強化が図られる。
最大となるB街区の建物は延べ面積約25万5000m2、地下4階・地上41階、最高高さ約208m、事務所、店舗、ホテル、人材育成拠点、バスターミナルなどの機能が入る。C街区の建物は延べ面積約6万3000m2、地下2階・地上41階、最高高さ約175mで、用途は住宅、生活支援施設など、A街区の建物は延べ面積約4200m2、地下1階・地上5階、最高高さ約50mで、用途は店舗などとなる。
22年の市街地再開発組合設立、24年の権利変換計画認可を経て、25年度の着工、29年度の3街区同時竣工を予定している。
広域交通機能や歩行者ネットワークを強化
国家戦略特区プロジェクトとしての都市貢献に関しては、(1)渋谷の広域交通機能の強化と東口エリアにまちの広がりを生む都市基盤の整備、(2) 国際競争力強化に資する都市機能の導入、(3) 防災対応力強化と環境負荷低減を掲げている。
広域交通機能の強化に関しては、バスターミナルの整備がメインとなる。首都高速の出入り口と近接する立地などを生かし、付帯施設を含めて約5000m2のターミナルを整備。空港リムジンバスや各地方都市との間の高速乗合バスの他、エリア内に乗降・待機場所が不足している観光バスにも対応する。
バスターミナルの構成。青山通りや区道929号に面して整備する。広場と隣接する配置とし、利用者が待ち時間などに快適に過ごせる場所とする(資料:内閣府・国家戦略特区ホームページ「第19回東京都都市再生分科会」(2021年6月29日)配布資料より、提案者:東京建物、都市再生機構)
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エリアの回遊性に関しては、幹線道路による駅方面と市街地の分断の他、渋谷駅から約15mある高低差がバリアとなっている課題などがあった。本プロジェクトでは、青山通りを渡る歩道橋(金王坂歩道橋)を、幅員8mの横断デッキに架け替える。バリアフリー動線には、縦移動のための「サブ アーバン・コア」を設ける。
にぎわいの核としては、傾斜する階段状の「上空広場」をA街区に整備する。青山通り側に眺望の開けた場所となる。またB街区の六本木通り側には、大庇(びさし)の架かる約2220m2の大規模広場を設け、バス乗降客の滞留スペースとする。
東口エリアにおけるにぎわい・回遊性向上のイメージ。横断デッキの整備などにより、渋谷駅から周辺市街地への歩行者のスムーズな回遊を促す(資料:内閣府・国家戦略特区ホームページ「第19回東京都都市再生分科会」(2021年6月29日)配布資料より、提案者:東京建物、都市再生機構)
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青山通りの現況。左奥が渋谷2丁目西地区再開発のA街区、右奥が同B街区の計画地。右手前は渋谷クロスタワー(計画地外)。左手前の渋谷ヒカリエに隣接する敷地では、東急が事業協力者となる渋谷2丁目17地区再開発の工事が進む(写真:日経クロステック)
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青山通り上の金王坂歩道橋の現況。幅員8mの横断デッキに架け替える。左奥が宮益坂上交差点、右手が渋谷2丁目西地区再開発B街区の計画地(写真:日経クロステック)
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青山通り横断デッキのイメージ。A街区からB街区方面を望んだイメージ(資料:東京建物)
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A街区の計画建物。青山通り側から望んだイメージ(資料:内閣府・国家戦略特区ホームページ「第19回東京都都市再生分科会」(2021年6月29日)配布資料より、提案者:東京建物、都市再生機構)
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計画建物。南側の六本木通り側から望んだイメージ(資料:内閣府・国家戦略特区ホームページ「第19回東京都都市再生分科会」(2021年6月29日)配布資料より、提案者:東京建物、都市再生機構)
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六本木通り側から望んだ現況。正面が渋谷2丁目西地区再開発B街区の計画地、右手前が同C街区の計画地(写真:日経クロステック)
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