東急と東急レクリエーションは2022年4月26日、東京・新宿の歌舞伎町1丁目で開発を進めている「東急歌舞伎町タワー」を23年4月に開業すると発表した。地下5階・地上48階建てで、高さが約225mの複合施設だ。2つのホテルやライブホール、劇場、映画館、店舗が入る。
東急歌舞伎町タワーは、「オフィスフロアを持たず、宿泊とエンターテインメントに特化した超高層ビルになる」(東急新宿プロジェクト企画開発室室長の木村知郎氏)。安定収入を得やすい事務所機能がない、歌舞伎町ならではの巨大娯楽施設だ。
オフィスを設けない新しい超高層のビジネスモデルが成立するのか、業界の期待や関心が高まっている。テナント賃料を稼ぐため、オフィスフロアを重ねてビルが上に高く延びる従来型の超高層の在り方に、一石を投じることになりそうだ。
ビルに毎日通うオフィス勤務者がいない以上、ホテルとエンタメで日々、多くの集客を図らなければならない。それには、ここでしか味わえないコンテンツやサービスの充実が欠かせない。東急と東急レクリエーションは国内最大級の歓楽街である歌舞伎町で、宿泊客や観客動員を見込める上質な体験を提供することを目指す。
今回、東急歌舞伎町タワーに入居することが発表された施設は、2つに大別できる。既に知名度が高く、ブランドが浸透しているもの。そして、全く新しい施設である。
例えばホールは、Zeppホールネットワーク(東京・港)が展開しているライブ施設「Zepp」の新しい拠点になる「Zepp Shinjuku (TOKYO)」を誘致した。音楽ファンにはおなじみで、国内外のZepp施設ネットワークを使ったライブツアーなどを企画しやすい。
劇場は、歌舞伎町の老舗である「新宿ミラノ座」の後継拠点となる「THEATER MILANO-Za」を設ける。歌舞伎町かいわいでミラノ座を知らない人はいないうえ、常連客もいた。新宿ミラノ座の跡地に建つビルに、そのMILANO-Zaの名を受け継ぐ新劇場ができるのは安定感がある。
東急といえば東京・渋谷のイメージが強いが、再開発前に閉鎖した「新宿TOKYU MILANOビル」の前身である旧新宿東急文化会館は、東急の名を配した歌舞伎町の娯楽施設だ。1950年代からこの場所でエンタメビジネスを展開してきた東急レクリエーションの経験がどう生かされるか、注目したい。
映画館は、東急グループの「109シネマズ」が入る。ただし、「109シネマズプレミアム」という上位ブランドを新設し、109シネマズプレミアム新宿として開館する。歌舞伎町周辺だけでも数多くの映画館があるので、ここではぜいたくな映画鑑賞環境の提供で差異化を図る計画だ。
フロア配置は、Zepp Shinjuku(TOKYO)が地下1~地下4階、THEATER MILANO-Zaが地上6~8階、109シネマズプレミアム新宿が地上9~10階になる。Zeppは立ち見で1500人を収容可能、MILANO-Zaは約900席、109シネマズプレミアム新宿は8スクリーンを備えて総席数が752席になる。
ZeppとMILANO-Zaは、出演者と観客の距離が近い空間設計が特徴だ。MILANO-Zaは座席数も公演ごとに変更可能な仕組みになっている。109シネマズプレミアム新宿は2フロアに約750席と、通常の109シネマズの半分ほどの席数に抑えた。ゆとりのあるスクリーン空間やラウンジで、優雅に映画を楽しめるようにしている。
なお、低層部の地上1~5階は主に、商業施設になる。