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 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造による3層飛ばしのメガストラクチャーの内側に木造の構造物を入れ子状に組み込む──。平和不動産が東京・日本橋兜町に建てたハイブリッド木造ビル「KITOKI(キトキ)」は、高層木造建築の新たな形を示している。

 2022年6月に開かれたKITOKIの見学セミナーには、建築設計者など約500人が詰めかけた。国内初となるメガストラクチャーのハイブリッド木造ビルに、多くの建築関係者が熱視線を注いでいる。

平和不動産が東京・日本橋兜町に建てた「KITOKI」。10階建てのハイブリッド木造ビルだ(写真:北山 宏一)
平和不動産が東京・日本橋兜町に建てた「KITOKI」。10階建てのハイブリッド木造ビルだ(写真:北山 宏一)
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 建物は10階建てで、最高高さ約34.5m。延べ面積は約790m2だ。22年4月に竣工し、5月末に内装工事を終えた。設計・施工はADX(福島県二本松市)が担当した。同社は20年2月開業の複合施設「K5(ケーファイブ)」で平和不動産と協働した経験を持つ。

 KITOKIはSRC造と木造のハイブリッド構造。おおよそ1m角の柱と梁(はり)せい1~1.3m程度の梁で構成されたSRC造のメガストラクチャーが建物全体を支える。メガストラクチャーの柱スパンは南北方向に約6.4m、東西方向に約5.6m。高さ約10mの層が3つ重なった巨大な構造体だ。

 その内側に木造の構造物を挿入して、各層を3フロアに分割する。メガストラクチャーの内側は計9フロアになる。建物の内部には、SRC造の空間と木造の空間が混在する。

SRC造によるメガストラクチャーの内側に木造の構造物を入れ子状に組み込んでいる。メガストラクチャーの柱は南北方向1スパン、東西方向2スパンだ(資料:ADX)
SRC造によるメガストラクチャーの内側に木造の構造物を入れ子状に組み込んでいる。メガストラクチャーの柱は南北方向1スパン、東西方向2スパンだ(資料:ADX)
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7階の天井には木の梁が現れる。天井高は約2.8m、梁下で約2.3mだ。KITOKIの2階、4階、7階は家具などを入れた状態で貸す。内装デザインはparkERs(パーカーズ、東京・港)が手掛けた(写真:北山 宏一)
7階の天井には木の梁が現れる。天井高は約2.8m、梁下で約2.3mだ。KITOKIの2階、4階、7階は家具などを入れた状態で貸す。内装デザインはparkERs(パーカーズ、東京・港)が手掛けた(写真:北山 宏一)
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6階にはSRC造によるメガストラクチャーの梁が現れる。天井高は約3m(写真:北山 宏一)
6階にはSRC造によるメガストラクチャーの梁が現れる。天井高は約3m(写真:北山 宏一)
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 木造の構造物はメガストラクチャーの土台の上で自立しており、建物全体の構造を負担しない。そのため木造部分は実質的に低層木造建築と見なすことができる。実際にKITOKIの木造部分では、梁のピッチを約910mmにするなど木造住宅の伝統的なモジュールに近づけている。高層木造ビルに木造住宅のノウハウを適用できるという点で、これまでの高層木造建築とは一線を画している。