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 中高層のオフィスビルが立ち並ぶ東京都新宿区の四谷エリア。新宿通り沿いを歩いていると、オフィス街の中に突如、木製のクロスを敷き詰めたような外観の建物が見えてくる。道行く人々が不思議そうに見上げるこの建物は、上智学院(東京・千代田)が建設した新校舎「上智大学四谷キャンパス15号館」だ。

上智大学四谷キャンパス15号館北側の外装。木製のクロスを敷き詰めたような外観が特徴だ(写真:日経クロステック)
上智大学四谷キャンパス15号館北側の外装。木製のクロスを敷き詰めたような外観が特徴だ(写真:日経クロステック)
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上智大学四谷キャンパス15号館。同大学社会人向けプログラム用の校舎で、1階はカフェ、2・3階が教室だ。1階のカフェは誰でも利用できる。東京都の「木の街並み創出事業」に採択された(写真:日経クロステック)
上智大学四谷キャンパス15号館。同大学社会人向けプログラム用の校舎で、1階はカフェ、2・3階が教室だ。1階のカフェは誰でも利用できる。東京都の「木の街並み創出事業」に採択された(写真:日経クロステック)
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 上智大学新校舎は耐火木造の地上3階建てで、延べ面積は約478m2。1階は地域交流拠点として誰でも利用できるカフェ、2・3階は上智大学が実施している社会人プログラム用の教室として活用する。同施設は2022年5月に完成。同年秋に利用を開始する予定だ。

 新校舎の設計・施工は住友林業、構造設計はKAP(東京・千代田)、耐火塗料加圧・耐火試験などは住友林業筑波研究所が手掛けた。住友林業は同施設の外装と構造躯体(くたい)に計約124m3の木材を使用。独自開発した塗料の使用や、ポストテンション耐震技術の採用など、中高層木造建築物向けの最新技術を盛り込んでいるという。

 SDGs(持続可能な開発目標)実現に向けた取り組みを進めてきた上智学院。同学院広報グループの川端健太氏は「住友林業と新校舎のデザインについての協議を進めるなかで、木をふんだんに使ったデザインにすることが決まった。SDGsを体現する校舎として、利用する学生や地域住民に環境配慮などに興味や関心を持ってもらいたい」と期待を寄せる。

 とりわけ目を引く新校舎の外観は、上智大学が理念に掲げる「多様性」や「他者との交流」などが交差している様子を、木のクロスで表現している。外装材には多摩産のスギを約12m3使用。異なる太さの木材をT字形に組み合わせたものを、鉄骨部材のフラットバーに両側から固定してクロスを表現。施設の北・東面を覆った。

 住友林業建築事業部設計グループの土屋龍彦シニアマネージャーは、「施設の開口率は約40%。格子の隙間から自然光が差し込むため、直射日光を遮り、夏場に室温が上がり過ぎるのを防ぐ。施設全体の省エネ化にも寄与する」と説明する。

外装材に用いた木材。異なる太さのものを組み合わせて、格子状の外装を形成する(写真:住友林業)
外装材に用いた木材。異なる太さのものを組み合わせて、格子状の外装を形成する(写真:住友林業)
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左は木材を取り付ける前の様子。写真右側に映る白い部材が木材を固定する鉄骨材のフラットバーだ(写真:住友林業)
左は木材を取り付ける前の様子。写真右側に映る白い部材が木材を固定する鉄骨材のフラットバーだ(写真:住友林業)
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木材を取り付けた後、テラスから見た外装材の様子。写真左側が教室。格子の隙間から自然光が差し込むようにすることで、直射日光を遮り、夏場の温度上昇を防ぐ(写真:日経クロステック)
木材を取り付けた後、テラスから見た外装材の様子。写真左側が教室。格子の隙間から自然光が差し込むようにすることで、直射日光を遮り、夏場の温度上昇を防ぐ(写真:日経クロステック)
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 外装に使用した木材には、兼松サステック(東京・中央)の防腐・防蟻(ぼうぎ)剤を含浸(がんしん)させて、シリコン系超撥水(はっすい)形塗料「S-100」を塗布している。木材を外装に用いると、紫外線や風雨、温度変化などによって変質や劣化が生じる恐れがあるからだ。

 S-100は、信越化学工業のシリコーン技術を活用して住友林業が21年に独自開発した半造膜・水系の木材保護塗料だ。紫外線を散乱させつつ、木材内部への水の浸入を軽減できるため木材の灰色化や腐食を防げる。

 土屋シニアマネージャーは、「外装に木材を採用した場合、雨風にさらされて劣化するため、通常だと1年でメンテナンスが必要になる。上智大学四谷キャンパス15号館の外装木材には防腐・防蟻剤を含浸させて耐久性を高めつつS-100を塗装しているため、木材を取り換える必要はない。約5年に1度、S-100を再塗装するだけで、木材の美観を保てる」と自信を見せる。