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西武新宿線沼袋駅のホームから線路を見たところ(写真:大上 祐史)
西武新宿線沼袋駅のホームから線路を見たところ(写真:大上 祐史)
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 西武鉄道の西武新宿線沼袋駅のホームで電車を待っていると、線路の間に隙間なく板が敷かれていることに気づく。地下に構造物を構築するために、軌道(線路)を仮受けする仮設の「工事桁」だ。沼袋駅では踏切除去を主な目的として線路や駅舎の地下化工事が進む。2023年2月、既存駅の直下で進む工事現場に入った。

 東京都は、道路整備の一環として鉄道を連続的に高架化または地下化し、多くの踏切を一挙に除却する「連続立体交差事業」を地元の区市や鉄道事業者と連携して進めている。「開かずの踏切」を減らし、交通渋滞および踏切事故を解消することが主な目的だ。

 沼袋駅を含む西武新宿線の中井駅付近から野方駅付近までの約2.4kmは、そうした連続立体交差事業を実施する区間の1つだ。都と西武鉄道が施行協定を締結し、西武鉄道が鉄道工事を手掛ける。全体事業費は約737億円で、国と都、中野区、西武鉄道が負担する。

「西武新宿線(中井駅―野方駅間)連続立体交差事業」の概要(出所:西武鉄道)
「西武新宿線(中井駅―野方駅間)連続立体交差事業」の概要(出所:西武鉄道)
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 同区間での施工は、地上から掘削してトンネルを構築する開削工法と、シールド機でトンネルを掘進するシールド工法の2つに大きく分かれる。地下から地表への移行区間である取り付け部と駅部では開削工法、駅間などの一般部ではシールド工法を採用。シールド機は開削区間となる駅部では掘削せず、そのまま通過する。

 沼袋駅では、軌道の下を約18m掘削し、既存駅の地下に新駅を構築する。まず、工事ヤード確保のため、線路を4線から3線に変更。その後、土留め壁を構築する工事に取り掛かった。

沼袋駅の地下化工事の施工手順(出所:西武鉄道)
沼袋駅の地下化工事の施工手順(出所:西武鉄道)
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 軌道の下に構造物を構築する場合、工事桁で軌道を仮受けする。旧駅施設の支障物の撤去が完了した区間から順次、工事桁で受け替えた。工事桁は、軌道上でクレーン作業が可能な「軌陸クレーン」を使用して、終電車から始電車までの短い時間に架設した。

工事桁は終電車から始電車までの短い時間に架設した(写真:西武鉄道)
工事桁は終電車から始電車までの短い時間に架設した(写真:西武鉄道)
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 沼袋駅のホームから軌道を見ると、23年2月時点で工事桁の架設はおおむね完了している様子が分かる。

23年2月時点の軌道(写真:大上 祐史)
23年2月時点の軌道(写真:大上 祐史)
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