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 おしゃれな街のイメージが強い東京・青山。ここもまた、都内の他の街と同様に姿が変わり始めている。

 青山通りと外苑西通りの交差点のすぐそばで、2023年2月20日に竣工したオフィスビル「3rd MINAMI AOYAMA(サード・ミナミ・アオヤマ)」は、三菱地所が青山で仕掛ける再開発プロジェクトの1つだ。同年3月16日には竣工式を実施し、テナントも決まり始めている。事業者は五光と三菱地所である。

港区南青山3丁目に誕生したオフィスビル「3rd MINAMI AOYAMA」。オフィスフロアに「インナー/アウターバルコニー」を設けたのが最大の特徴(写真:日経クロステック)
港区南青山3丁目に誕生したオフィスビル「3rd MINAMI AOYAMA」。オフィスフロアに「インナー/アウターバルコニー」を設けたのが最大の特徴(写真:日経クロステック)
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 地下鉄銀座線の外苑前駅から地上に出て、交差点から青山通りの表参道方向を見る。するとあまり見かけたことがない、建物正面に巨大な凸凹(デコボコ)があるガラス張りのビルが目に飛び込んでくる。

青山通りに面する13階建ての建物は、凸凹がある特徴的な正面デザインが人目を引く(写真:日経クロステック)
青山通りに面する13階建ての建物は、凸凹がある特徴的な正面デザインが人目を引く(写真:日経クロステック)
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 記者はビルを設計した三菱地所設計建築設計一部の本田輝明チーフアーキテクトに、「この建物の形を何と呼んだらいいか」と尋ねた。すると「凸凹ビルですかね」との回答をもらったので、この記事では分かりやすくそう呼んでいる。青山の凸凹ビルと呼ばれるようになるかもしれない。それくらい、青山通り沿いではインパクトがある。

 なお、記者自身の初見の印象は、子どものころに遊んだテレビゲーム(ガラス張りのビルを手で登っていくクライミングゲーム)そのものに見えた。絶対にまねしてはいけない。

青山通りに面し、外苑西通りの交差点のすぐそば。交差点に面する商業ビル「the ARGYLE aoyama(ジ・アーガイル・アオヤマ)」も、三菱地所が2020年に建て替えたもの(出所:五光、三菱地所)
青山通りに面し、外苑西通りの交差点のすぐそば。交差点に面する商業ビル「the ARGYLE aoyama(ジ・アーガイル・アオヤマ)」も、三菱地所が2020年に建て替えたもの(出所:五光、三菱地所)
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 地下1階・地上13階建てで、高さが約60m。構造が鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造のオフィスビルだ。敷地面積は約2400m2、延べ面積は約1万4700m2。設計は三菱地所設計、施工は鹿島が手掛けた。

 10年前の青山を知っている人なら、以前ここに何があったか覚えているに違いない。五光ビルの低層部に、スーパーの「ピーコックストア青山店」が入居していた。このエリアはスーパーが少なく、重宝していた人も多いだろう。

 そして交差点に立つthe ARGYLE aoyamaもまた、青山を代表するお買い物スポットだった場所だ。商業ビル「青山ベルコモンズ」の跡地に立っている。三菱地所がベルコモンズとピーコックストアの記憶が残る象徴的な場所を拠点に、青山で勢力を拡大している。

 3rd MINAMI AOYAMAの真下まで来ると、凸凹の正体である「インナー/アウターバルコニー」の茶色い軒天に目がいく。木板にも見えるが、実際はセメントに模様を付けたものだ。このビルのあちこちに、同じ軒天の仕上げが使われている。

インナー/アウターバルコニーの軒天は、木目にも見える特徴的な茶色の模様が印象的だ。実際はセメントに、くし模様を付けたもの(写真:日経クロステック)
インナー/アウターバルコニーの軒天は、木目にも見える特徴的な茶色の模様が印象的だ。実際はセメントに、くし模様を付けたもの(写真:日経クロステック)
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 アウターバルコニーは、間近で見るとかなり大きい。2~3層吹き抜けで天井高が約7~11m、奥行きが約4mある。ぜいたくな半屋外空間だ。 

オフィスフロアの窓から、飛び出たアウターバルコニーの角を見る。宙に浮いているようだ。真下が青山通り(写真:日経クロステック)
オフィスフロアの窓から、飛び出たアウターバルコニーの角を見る。宙に浮いているようだ。真下が青山通り(写真:日経クロステック)
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 地上2~13階のオフィスフロアには、インナーバルコニーやアウターバルコニーが備わっている。フロアによってバルコニーが異なるため、どのフロアも違う平面計画になっている。

 鹿島の吉居崇工事事務所長は、「実際には基準階フロアというものがない。どのフロアも異なる平面計画になっているオフィスビルを初めて建てた」と振り返る。当然、施工の難易度は高かったという。

3rd MINAMI AOYAMAの断面図(出所:五光、三菱地所)
3rd MINAMI AOYAMAの断面図(出所:五光、三菱地所)
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基準階フロアの平面図。基準階有効面積は約773~863m<sup>2</sup>。ただし、実際はどのフロアも異なる平面になっており、同じフロアがない(出所:五光、三菱地所)
基準階フロアの平面図。基準階有効面積は約773~863m2。ただし、実際はどのフロアも異なる平面になっており、同じフロアがない(出所:五光、三菱地所)
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 オフィスフロアを画一的にせず、インナー/アウターバルコニーを設けて特徴を強く打ち出したのには訳がある。「コロナ禍以降、会社に行きたくなるようなオフィスが求められるようになったと感じている。その象徴としてインナー/アウターバルコニーにこだわった」(三菱地所再開発事業部の鈴木理功副主事)

オフィスフロアの中央部から見たインナーバルコニー(写真:日経クロステック)
オフィスフロアの中央部から見たインナーバルコニー(写真:日経クロステック)
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向かって左側が青山通りに面するアウターバルコニー(写真:日経クロステック)
向かって左側が青山通りに面するアウターバルコニー(写真:日経クロステック)
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吹き抜けのアウターバルコニーは天井高が約7~11m、奥行きが約4mある。立食パーティーができそうな広さだ(写真:日経クロステック)
吹き抜けのアウターバルコニーは天井高が約7~11m、奥行きが約4mある。立食パーティーができそうな広さだ(写真:日経クロステック)
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インナーバルコニーの1つ。床はカーペットではなく、フローリング仕上げ。天井照明も黒のスポットライトにするなど、事務室ゾーンとは空間の雰囲気を変えている(写真:日経クロステック)
インナーバルコニーの1つ。床はカーペットではなく、フローリング仕上げ。天井照明も黒のスポットライトにするなど、事務室ゾーンとは空間の雰囲気を変えている(写真:日経クロステック)
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