住宅を襲う災害はしばしば、住宅の設計・施工者の頑張りだけでは対応しきれず、建てた土地の近辺に設けられた土木インフラが頼みの綱となる。このパターンに果たして限界はないのか――。2018年9月の台風21号で高潮・高波のため生じた南芦屋浜(兵庫県芦屋市)の浸水被害を取材して、改めて考えさせられた。
南芦屋浜は兵庫県が1997年1月、大阪湾に面した芦屋市南端に完成させた125haの人工島で、「潮芦屋」の通称で知られている。2018年9月4日、主に関西で猛威を振るった台風21号では南側の護岸の一部で越波が生じて、市の推計で34haが浸水した。浸水深は最大で約70cmに及んだ。
台風21号の高潮・高波では他にも阪神間の臨海部が浸水被害に見舞われたが、南芦屋浜が特異だったのは、07年の県の高潮浸水予測で浸水リスクが無い空白地帯としていた点だ。市はこの予測を踏まえて、南芦屋浜で戸建て住宅中心の街づくりを進めてきた。
越波で浸水した南側護岸に近いエリアには低層の戸建てが、陸に近く浸水を免れた北側のエリアには南芦屋浜団地の高層住宅が立ち並んでいる。このうち低層の戸建てが数多く被害を受けた。市の推計で床下浸水は230棟、床上浸水は17棟に達した。