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 大雨が猛威を振るう年が増えています。2018年の西日本豪雨、19年の台風19号など甚大な水害をもたらす気象が当たり前のように繰り返されており、今後はこのくらいの豪雨や暴風が普通に襲い掛かってくると考えた方がよいでしょう。

 こうした災害が被害を大きくした要因は、河川堤防の決壊にあります。台風19号では国や県が管理する河川堤防の140カ所で決壊が発生しました。浸水被害が広域にわたり、人的、経済的な被害を深刻なものにしたのです。

 河川堤防の決壊を招く主な要因は、河川の水が堤防を乗り越える越水です。そこで、日経コンストラクション2月24日号では、越水を考慮した堤防構造について考える特集「消された堤防」を企画しました。

日経コンストラクション2020年2月24日号の特集「消された堤防」(資料:日経コンストラクション)
日経コンストラクション2020年2月24日号の特集「消された堤防」(資料:日経コンストラクション)
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 実は、過去の一時期、国は越水を考慮した堤防を熱心に研究し、試験的に複数の河川で整備してきた歴史があります。1990年代後半には建設白書にも登場し、2000年には設計指針も作成されたくらいです。

 ところが、その時に考えられていた越水に対して粘り強さを期待できる堤防構造は、2002年に突然、姿を消してしまいます。国は通常の堤防での越水に対する取り組みを封印してしまったのです。

 この姿を消した設計指針、発信元の国土交通省(発信当時は建設省)治水課に情報公開を求めても、資料は出てきません。“幻の基準書”になっているのです。「技術の信頼性が足りなかった」「ダム整備に反対する人が台頭してきた」など今回の特集で取材した国交省出身の河川技術者からは、いくつかの理由が語られています。