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 昭和生まれだからかもしれませんが、私は「技」という言葉に引かれます。実際に目の前で伝統職人が工芸品などを加工している姿を見ると、うっとりとしてしまうのです。

 どんな仕事にも「技」の要素はあります。われわれ記者の仕事にも「技」の要素は少なくありません。取材のアポを取る技、相手から独自の情報を聞き出す技、資料を入手する技、集めた材料をストーリーとして組み立てる技、明快な文章を書く技、分かりやすい図版を作る技――。たくさんの仕事を積み重ねる中で培われていくノウハウです。

 こうしたノウハウを若い世代に伝えるのは決して簡単なことではありません。それは、普段の仕事を通じて痛感しています。そもそもノウハウをマニュアルに示せるような言葉に置き換えても、それだけでは相手に伝えたいことの本質が十分に伝わらないからです。

 やはり本人が、自分自身の中でふに落ちるまで体験や経験を積み重ねていかなければ、本当の意味での技は引き継がれていかないのです。

 建設の仕事は、ものづくりの仕事です。私が編集の仕事で感じる技よりも、もっと多く、そしてもっと深くて複雑な技であふれているはずです。そうした技のコツやノウハウを次の世代に伝えていくことは、たやすいことではないでしょう。

 それでも、建設現場で働く技能者の高齢化は着実に進んでいます。ノウハウの伝承が危うくなりつつあるのです。これから5年、10年の間に、たくさんの構造物を造ってきたベテランだからこそ培えた貴重な技を、次の世代へ伝承していかなければいけません。

 日経コンストラクション2020年10月26日号の特集「伝承テックで技を受け継げ」では、そうした技能伝承の問題を、新しいテクノロジーで解決する取り組みを紹介しました。

日経コンストラクション2020年10月26日号の特集「伝承テックで技を受け継げ」(資料:日経コンストラクション)
日経コンストラクション2020年10月26日号の特集「伝承テックで技を受け継げ」(資料:日経コンストラクション)
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