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 日経コンストラクション2021年2月22日号で、まず注目していただきたいのが、特集「橋梁点検の罠」です。点検後に劣化が進展したり、点検で十分に劣化を見抜けなかったりして、橋に重大な損傷が生じた事例を掘り下げました。

日経コンストラクション2021年2月22日号の特集「橋梁点検の罠」(資料:日経コンストラクション)
日経コンストラクション2021年2月22日号の特集「橋梁点検の罠」(資料:日経コンストラクション)
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 特集で最初に取り上げたのは、山口県が管理する上関大橋です。1969年に完成したPC(プレストレスト・コンクリート)箱桁橋で、17年度の定期点検では健全度が2番目に良好なIIと判定されていました。

 ところが次の点検を待たず、2020年11月に桁端部が跳ね上がって路面に段差が発生。その段差に衝突した自動車が損傷するという事態に至りました。上向きの力が加わる桁端部に設けた鉛直PC鋼棒が破断していたからです。コンクリート内への水の浸入が腐食を招いたとみられています。

 桁や橋台に埋め込まれた鉛直PC鋼棒は、目視で劣化状況を確認できません。ですから、現状の点検の枠組みでの把握が難しい部分は一定程度、理解できます。17年度に示された健全度は、精緻な点検ができないという前提では、妥当であったのかもしれません。

 しかしこの橋では、実は15年前に反対側の桁端部で同じような鉛直PC鋼棒の破断が見つかっていたことが、日経クロステック/日経コンストラクションの取材で明らかになりました。この点を踏まえると、橋の維持管理に対する管理者の取り組みに疑問が湧いてきます。

 もちろん県は、15年前の鋼棒破断の発覚時に、2020年に破断が見つかったPC鋼棒の状態を確認していました。ただ、当時は破断などが見つかりませんでした。そのため、今回破断が確認された箇所では、補強などの対策を講じなかったのです。

 問題がなければ対策まで講じなくてもよいかもしれません。それでも、過去の問題に向き合ったリスク管理をしていれば、定期的なPC鋼棒の健全度把握といった取り組みを進められたはずです。過去の教訓を生かしてリスク管理をするということは、技術者に求められる基本的な姿勢です。