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 「コンクリートから人へ」。2009年に政権交代を果たした民主党が掲げたスローガンを覚えている人は多いでしょう。マニフェストに「コンクリートではなく、人間を大事にする政治に」と記し、建設を中心とした公共事業をコンクリートに置き換えて短絡的に人と対立させた構図は、国民に強烈な印象を与えました。

 当時、このスローガンは頻繁にメディアで取り上げられたので、かなり多くの人に届いたはずです。今でも、コンクリートは人の生活と対立するものだと捉えている人は珍しくありません。

 しかし、コンクリートは便利で安全な社会生活を維持する上で欠かせない材料です。材料コストが安く、形状の自由度は高い。耐火性や耐久性にも優れた材料です。経済活動や防災の要となるインフラ構造物の多くは、コンクリートなしでは成立しません。人と対立する材料ではなく、むしろ人の生活を支え、命を守る味方なのです。

 先のスローガンは科学的な意味よりも、政治的な目的を優先した表現にすぎませんが、結果としてコンクリートという材料に対するイメージを大きく損ねてしまいました。

 とはいえ、科学的にコンクリートという材料を捉え直すと、課題も存在します。それは地球温暖化を進めてしまう点です。コンクリートの原料であるセメントの製造過程で、大量の二酸化炭素が排出されるからです。

 日経コンストラクション2021年6月14日号の特集「脱炭素コンクリートが地球を救う」では、コンクリートが地球温暖化の問題に対して抱えていた弱点を克服し、温暖化対策の切り札の1つになる可能性を示しています。コンクリートの製造や施工時に様々な方法で炭素を固定し、排出量以上の二酸化炭素を吸収させる技術の開発が急速に進んでいる状況を整理しました。