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発注者に人材育成の協力仰ぐ

 建設産業では人材不足が続いており、若手の育成は喫緊の課題です。そこで7月26日号では、若手育成に定評のあるベテランの取り組みを中心に紹介した特集「人材育成の達人」を企画しました。

 特集で紹介した事例のなかで特に興味深いと感じたのは、自分だけで若手を鍛えるのではなく、周囲を巻き込んで育成に取り組んでいるベテランが少なくなかった点です。

 人を育てていくなかで、「徒弟制度」のような濃密な関係が重要だと考える人も少なくないでしょう。ただ、この方法は人間関係などに育成が左右されたり、偏った知見しか得られなかったりするリスクを伴います。いろいろな人と接しながら経験を積んでもらうことで、そうしたリスクを抑えたいという意見もあるでしょう。

 ある建設コンサルタント会社の部長は、発注者に若手育成を手伝ってもらってきたと言います。発注者との打ち合わせに若い技術者を1人で向かわせて会話をさせるだけでなく、説明用の書類はレジュメ1枚にさせるという徹底ぶりです。

 資料をたくさん用意させないのは、書類だけに頼った議論を防ぐためです。発注者が本当に求めていることを引き出すうえで、資料が邪魔になる場合があるとみているのです。若手自身の言葉や表現力を養おうという意図も込めていました。コミュニケーションの本質を考え抜いた育成といえるでしょう。

 もちろん、若手に任せきりにするのではなく、フォローも十分に行っています。発注者には事前に若手が1人で出向く旨を伝えたり、打ち合わせの後に発注者に連絡を入れて若手の対応をフォローしたりしているのです。

 特集では、OJTに依存していた教育を見直した地方の建設会社の例も紹介しました。中小規模の会社では、各職場に毎年若手が配属されるとは限りません。その結果、教える側のスキルが十分に磨かれず、適切な指導や教育が困難になるケースも出てきます。

 こうした課題を解決するために、社員数が約180人のある建設会社は、eラーニングに着目しました。OJTのように人間関係に依存するわけではないので、教育のむらを減らす効果を期待できます。画像などを使い、言葉だけでは伝えにくいノウハウを伝授しやすくなる点でも有利だとみました。

 この会社ではeラーニングの教材製作に社員の約5分の1に当たる30~40人が協力しました。社内からは、eラーニングによるスキル習得などで手応えを感じる声も出てきているそうです。

 教育の手法は、組織が保有する技術の特性や組織の規模、上手な教え手の数など様々な条件によって最適解が異なってきます。特集で紹介した手法やアイデアを参考に、各組織で最適な育成法を磨いていただければ幸いです。