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 もう13年も前の話です。私は日経アーキテクチュアという建築雑誌の編集部に所属していました。前年に米国のアル・ゴア前副大統領(当時)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がノーベル平和賞を受賞し、地球温暖化や自然環境に対する話題が世間で大きく取り上げられていた時期です。

 一方、建築界での環境配慮への取り組みは、まだ緩やかでした。例えば、省エネ法に基づく届け出対象を広げるといった規制強化は進んでいましたが、工務店が手掛けるような戸建て住宅や小規模な建物は規制対象から外れるなど、規制の網はまだ粗いまま。CASBEE(建築環境総合性能評価システム)と呼ぶ、建物の環境性能を評価する手法も、一部の進んだ建物で導入されている程度でした。

 環境に対する世の中の動きと建築界との温度差は大きい。そう強く感じ、環境というテーマでインパクトのあるコンテンツを作りたいと思い至りました。そこで、日経アーキテクチュア1冊を環境の話題で埋め尽くすという企画を立て、特集3本やコラムなどを執筆・編集。大量の取材を通じて、改めて建築分野での取り組みは地球環境の面で貢献できるという確信を得ました。

 コンテンツの方も、環境というテーマ性を明確に打ち出して情報を束で掲載した効果も手伝ったのか、過去に掲載していた環境系の記事以上の反響がありました。

 現状でも、省エネ法で大胆な規制を盛り込めないなど、建築界での取り組みが不十分な部分は残ります。それでも、その頃に比べて環境配慮の取り組みは格段に進み、建て主側の意識も変わってきました。

 住宅会社は建物の省エネ性能を競うようになり、今では省エネを実現しつつ屋内環境を快適にする全館空調の住宅が、テレビで宣伝されるほどになりました。環境と健康を結び付ける流れが生まれ、前述のCASBEEでも、健康という視点を前面に出した環境性能評価のシステムが整備されています。

 建築界はこの10年ほどで、環境に配慮した「グリーンビルディング」が仕事に直結する世界へと変貌してきたのです。

 土木の世界にも、環境という視点がこれまでとは異なる次元で評価される時代が到来しつつあります。国は「グリーンインフラ」への投資を予算で拡充する方針を明確に打ち出し、公共インフラでの環境性能の重要性が増してきました。

 日経コンストラクション2021年9月27日号では、この大きな時代の流れを分かりやすく伝える特集「受注に欠かせない新教養、グリーンインフラ」を用意しました。