日経コンストラクションでは近年、「建設DX」というテーマに沿って数々の記事を掲載してきました。ドローンやレーザースキャナーで取得した3次元データを計画や維持管理に生かす取り組み、重機の自動運転で生産性を高めた施工など、業務の種別や技術の内容も様々です。
しかし、読者の方全員が誌面に掲載した取り組みを身近だと感じられたかと問われれば、一抹の不安が残ります。もう少し多くの実務者の方が身近に感じられるような建設DXの取り組みを紹介してみてもよいのではないか──。そんな思いを出発点にして取り組んだのが、2021年12月13日号の特集「いつもの仕事をICTで楽に」です。
特集で取り上げた技術は、日ごろの身近な業務に要していた手間を軽減するものばかりです。建設現場に必須の「KY活動」を支援するシステムはその代表例です。
「KY活動」で重要なのは、言うまでもなく当日の作業にマッチした過去の教訓です。その日の作業内容などをキーワードとして入力すると、AI(人工知能)が過去のデータから類似の事例を抽出。その作業における危険度の分析結果などを提示して、適切なKY活動が進められる。そんなシステムが利用され始めています。
多様な人材とのコミュニケーションを支援する技術もあります。近年の人手不足を受けて、海外から来た技能者に頼らざるを得ない工事現場は少なくありません。
こうした現場では、日本語だけでは十分なコミュニケーションが図りにくいケースがあります。コミュニケーションが不足すれば、安全や工事品質に悪影響を及ぼしかねません。そこで、日本語を十分に使いこなせないスタッフと円滑に意思疎通するためのツールが生まれています。
スマートフォンに翻訳用アプリを入れ、入れ替わりなどが多い現場などでチームごとに分けて使えるようにしたツールです。誌面で紹介したのは大手建設会社の事例ですが、この技術は中小規模の現場でも活用できるかもしれません。
他にも生コン管理に使うICTツールや、トンネル切り羽の観察に使うiPadアプリなど工事現場の様々な日常業務で必要となる書類作成や作業管理の業務を省力化する技術を特集で取り上げました。身近な業務改善のヒントが詰まっていると思います。ご一読いただければ幸いです。
特集では身近な業務でのDXをお伝えしましたが、一方で2つの連載記事において、先進的なAI活用の話題を取り上げました。1つは、「建設AI導入のススメ」で紹介したAIを使ってバックホーを無線操縦車のように動かす技術です。
工事現場で使う重機の自動運転を目指した研究開発は、建設会社や重機メーカーだけでなく、AIなどの技術を持つスタートアップ企業なども注力しています。そのアプローチ方法は多様で、どの方法が市場を制するのかはまだ分かりません。この分野のDXで成功するには、日ごろから注意深く動向を追いかけていくことが大切です。
AI活用の話題を紹介したもう1つの連載は、「建設スタートアップ探訪」です。道路の維持管理を支援する技術を紹介しています。
自動車に取り付けたドライブレコーダーやスマートフォンを用いて路面を撮影し、AIを活用した画像解析で問題箇所を見つけます。既に実用化され、複数の自治体で採用されています。
業務を革新する建設DXの取り組みを多様な視点から解説した記事が満載の12月13日号。お仕事に役立てていただける情報が、きっと見つかると思います。