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 日経コンストラクションの編集長に就任した際に、真っ先に行ったのが、1年を見通した大まかな編集計画の作成です。その際、すぐに決めたのは年末に発行する号を、事故の特集にするということでした。1年の総まとめとして、読者の方の要望が特に強い情報をお届けしたいと考えたのです。

 以前もこのコラムで書いたかと思いますが、事故やミス、トラブルの情報は、読者の方の関心が特に高い分野です。そのため、日経コンストラクションでも非常に力を入れて取材しています。他の建設系メディアが取り上げない領域でもあり、弊誌が話題にしなければ、詳しい情報はあまり出てきません。

 もちろん、当事者を非難するために取材しているわけではありません。同種の事故やトラブルを繰り返さないために、広く情報を知ってもらうのが目的で、いわゆる「失敗学」の発想です。建設現場やインフラの周辺が少しでも安全な空間となり、建設産業や土木構造物に対する社会の信頼が高まる未来を信じて取り組んでいます。

 これまでに報じてきた事故の多くは、基本を徹底していなかったために発生しています。事前に決めていたルールを破ったり、安全に作業するための基本動作を怠ったり──。事故は起こるべくして起こっているのです。

 2021年12月27日号の特集「見過ごせぬ事故の深層」で紹介した下水道工事中の土砂崩落は、これまでに繰り返し報じてきたタイプの事故です。土留めの基本をないがしろにした結果、作業員が生き埋めとなり、亡くなってしまいました。

 橋の建設工事で重量物同士が衝突して落下。重量物につないでいたチェーンブロックに作業員が巻き込まれてけがをした事例も、建設現場での基本がおろそかになっていた事例です。近接して重量物の移動をしないという基本を徹底していれば、防げた事故です。

 事前の情報を生かせずに事故に至るというケースも少なくありません。国道の覆道の頂版から縦6m、横4mにわたってコンクリートが剥がれ落ちた事故は、その典型例といえます。たまたまコンクリートの落下時に車が通っていませんでしたが、通過中の車両に落ちていれば大惨事になっていた恐れが大きい事故です。