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 まだi-Constructionという言葉が生まれる前、国土交通省が新しい技術などを取り入れて建設の仕事の生産性を高めるための議論を進めていると知った際に、「これは結構大きな流れになるのではないか」と直感したことを今も覚えています。

 笹子トンネルの天井板崩落事故を受け、老朽インフラの維持管理の合理化に向けて様々な施策がスピーディーに決まり、IT(情報技術)を活用した新技術を土木インフラの現場に積極的に入れようという機運が高まっていた時期だったためです。情報機器の性能が格段に上がり、コストもこなれてきて、実現できそうなことが劇的に増えていた状況もそうように思わせたのでしょう。

 i-Constructionという言葉が生まれてからは、日経コンストラクションで数多くの技術を取り上げてきました。10年前の建設産業では考えられなかったような斬新な技術導入の記事は珍しくなくなりました。大手建設会社が中心となって手掛ける重機の自動運転や建設用3Dプリンターといった技術を紹介した特集などはその代表例です。

 一方、地方の中小規模の建設会社がITを活用して建設の仕事を革新するDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みについては、十分に伝えられていないと感じています。中小の建設会社や建設コンサルタント会社がITを駆使して革新的な取り組みを進める事例はまだ多くはありません。それでも、率先してDXに挑戦している会社は存在します。

 言うまでもなく、工事現場の数を数えれば、中小規模の建設会社が切り盛りする現場の方が圧倒的に多く存在します。建設産業の生産性を抜本的に高めるには、地域のインフラ構築を担う中小の建設会社や建設コンサルタント会社が、ITなどを活用して付加価値の高い仕事をこなせるようにする必要があります。

 そこで、日経コンストラクション2022年3月14日号では、地方の中小の建設会社が挑む生産性向上の取り組みにフォーカスした特集「やればできる 生産性2割アップ」を用意しました。