子どものとき、未知のモノに出合い、わくわくした覚えがある人は多いのではないでしょうか。見たことのない形、食べたことのない味、初めての手触り。対象に興味や関心を抱き、「もっと深く知りたい」という知的好奇心が刺激され成長していく──。
この経験は子どもだけの特権ではありません。大人になっても知的好奇心が刺激されることはあります。既存の枠組みを超えた大胆な変革に挑戦したり、見たことのない技術や材料が現場で使われたりしている場に出くわすと、わくわくします。
日経コンストラクション5月号では、そんなわくわくを感じられる2つの特集を用意しました。1つ目が「建設3Dプリンター元年」です。
私は建設3Dプリンターの魅力は、未知なる構造形式を自ら考案できる可能性を秘めている点にあると思っています。これまで製造や施工の制約でつくり出せなかった複雑な形状が可能になったり、大幅に軽量化したりすることができるのです。
示方書などのマニュアルに沿って巨大構造物を安全に設計、施工するのは土木の醍醐味の1つだと思いますが、未知なる造形物を生み出せるというのは、これからの土木業界の新しい醍醐味になるのではないでしょうか。
特集でも触れていますが、最近では自然界に存在しない性質を備えた人工物質を指す「メタマテリアル技術」を土木構造物に適用しようという研究が進んでいます。普通はひびが入るとそこから構造物の応力ひずみ曲線で囲んだ面積(エネルギー吸収量)は低下の一途をたどるものですが、メタマテリアル技術を駆使すれば、エネルギーの吸収量を増やすことも夢ではないとか。
造形物以外に品質管理の手法も興味深いです。中が見えにくい型枠を組んで打設するコンクリートは脱型後でなければ、内部の異常が分かりません。一方、セメント系3Dプリンターの場合は造形中に異常があれば直しながら造形を続行できるというのです。この方法がスタンダードになるかどうかは分かりませんが、従来と違ったアプローチができるという点で、知的好奇心が刺激されます。
2022年は建設分野で3Dプリンターの話題が尽きません。急速に普及しつつある3Dプリンターの動向を事例と共に紹介していますので、詳しくは誌面を読んでいただければ。