安全・安心な生活に寄与するはずのインフラストラクチャーが突然、市民に被害を及ぼす凶器と化す──。日経コンストラクション8月号では、「インフラクライシス」をテーマにした特集を2つ用意しました。1つ目がサイバー攻撃によるインフラへの脅威を描いた特集「インフラが乗っ取られる」です。佐藤斗夢記者が企画、執筆しました。
偽りの企業名を名乗るメールを送りつけて金銭を詐取する「フィッシング詐欺」をはじめ、あらゆるサイバー攻撃がまん延しており、個人でも情報管理に気を付ける時代です。情報窃取について、企業や自治体が注意するのは当たり前でしょう。
一方で、インフラの制御装置へのサイバー攻撃対策については、遅れがちだといわれています。インフラは規模が巨大なだけに、その制御装置が乗っ取られて機能不全に陥ったり、不正操作されたりして、ひとたび「牙をむく」と、とてつもない被害につながりかねません。
世界では既に、水道や空港、鉄道、電力施設、パイプラインなど多くのインフラが狙われています。実害を被った例は少なくありません。2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻ではコストをかけずに最大限の被害を与えるため、サイバー攻撃と軍事攻撃を組み合わせた「ハイブリッド戦」が展開されました。
日本でも実際に水道の遠隔監視システムが攻撃されたことがあります。特集ではこういった被害例や対策の紹介だけでなく、ダムの制御装置やICT(情報通信技術)建機など、標的となる恐れのあるテーマについても深掘りしました。
取材を通して見えてきたのは、サイバー攻撃対策の情報はなかなか表に出てこないことです。ハッカーを刺激したくないためか、一度狙われた企業や自治体は対策などに関する情報を基本的に明かしません。取材は難航しましたが、サイバーリスクの脅威を十分に感じ取れる特集に仕上がったのではないかと自負しています。ぜひご一読ください。