「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が施行されてから間もなく2年。さまざまな規制・誘導措置が適用されるようになった。その基本を解説する。
「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」は、規制措置と誘導措置を組み合わせたのが特徴だ(下の表)。狙いは名称の通り、建築物のエネルギー消費性能の向上にほかならない。
規制措置としては省エネ法から引き継いだものが2つ。床面積300m2以上の建築物を対象にした省エネ措置の「届け出」と、建売戸建て住宅を対象にした「住宅事業建築主(住宅トップランナー)」である。建築物省エネ法ではさらに、「特定建築物」に対する「適合義務・適合性判定」が新しく加えられた。
一方、誘導措置としては、既存建築物を対象にした「行政庁認定表示(基準適合認定)」と、一定の省エネ性能が認定された建築物に対して容積率の特例を適用する「容積率特例(誘導基準認定)」の2つが、新しく設けられた。
規制措置にしても誘導措置にしても、一定の基準を定め、規制・誘導を図る点は共通。規制措置ではその基準を下回らないように規制し、誘導措置ではその基準を上回るように誘導する。
基準への適合はBEIで判定
基準は、「適合義務・適合性判定」「届け出」「行政庁認定表示(基準適合認定)」の3つは共通で、いずれもエネルギー消費性能基準(省エネ基準)を用いる。これに対して「容積率特例(誘導基準認定)」は専用に定める誘導基準を、「住宅事業建築主」も専用に定める住宅事業建築主基準を用いる。
建築物の省エネ性能がこれらの基準に適合しているか否かは、「BEI(Building Energy Index)」と呼ばれる指標で判定する(下の表)。この指標は、基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の割合を示すもの。省エネ基準、誘導基準、住宅事業建築主基準ごとに、BEI(ビーイーアイ)の上限値が定められている。
設計一次エネルギー消費量の算定には、大きく2つの方法が用意されている。標準入力法と簡便なモデル建物法である。標準入力法は入力項目が多く、精緻に計算できるものの申請者や審査者の負担が大きい。ただ、標準入力法の入力シートからモデル建物法による結果を算出できるプログラムが開発・実装済みで、負担軽減を図ることが可能になっている。