建築物省エネ法で定めているその全体像と、建築設計者にとっての影響がとりわけ大きいとみられる特定建築物に対する省エネ基準の適合義務化に関して、基本をおさらいしておこう。
建築物省エネ法が定める規制・誘導措置の中で建築設計者にとっての影響がとりわけ大きいのは、「適合義務・適合性判定」である。下の表で言えば、「大規模建築物」の「非住宅」にあたる部分。省エネ法では届け出義務という扱いが、適合義務に変わった。
適合義務に変わったことで、建築主は所管行政庁や登録省エネ判定機関に省エネ性能確保計画を提出し、省エネ基準への適合性に関する判定をクリアしないと、建築確認の手続きを済ませ、着工することができなくなった。建築設計者にとって適合性判定は、建築確認と並ぶ重要な手続きになる。
適用対象の建築物は、「特定建築物」と呼ばれる床面積2000m2以上の非住宅用途のもの。ただし、適用対象外が3つ定められている。まず自動車車庫のように居室がなく開放性の高い建築物。次に文化財指定された建築物のように保存の必要から基準に適合させるのが困難なもの。最後に、仮設建築物だ。
「軽微な変更」は再判定不要
床面積の算定ルールも以下のように2つ定められている。
第一のルールは、高い開放性を有する部分は床面積に算入しないというものだ(下の図)。床面積2000m2の建築物でも高い開放性を有する部分で1000m2を占める場合、床面積はそれを差し引いて1000m2という扱いのため、適用対象から外れるわけだ。
第二のルールは、床面積はあくまで非住宅用途の部分だけで算定するというものだ。住宅用途との複合建築物の場合、住宅専用部分の床面積は算入しないのはもちろん、共用部分に関しても住宅の居住者が主に利用する部分は住宅用途として算入しない。
適合性の判定を受けた後に計画変更が生じたときは、着工前に再度、判定を受ける必要がある。ただし、(1)省エネ性能を向上させる変更 (2)一定以上の省エネ性能を有する建築物で、それを一定範囲内で低下させる変更 (3)根本的な変更を除き、再計算によって基準適合が明らかな変更──のいずれかに相当するものは「軽微な変更」にあたるため、判定を受け直す必要はない。