設計監理契約に盛り込む
手続きをすでに終えた案件はどの程度ありますか。
20件ほどです。ただ完成した建築物は、まだありません。
これらのプロジェクトは、今のところ省エネ基準を上回っています。私たちがこれまで確保に努めてきた環境性能であれば、省エネ適判を十分にクリアできるレベルです。一方、省エネ適判をクリアできないような建築物は、建築主が後々困ってしまうくらい環境性能が低いと言えると思います。
それらの案件では設計業務はどのように進めているのですか。意匠設計者と設備設計者のコラボレーションは欠かせないと思います。
全てプロジェクトチームで対応しています。チームの中には最初から、意匠設計者と設備設計者を参加させるようにしています。
意匠設計者は建築主のプログラムを最もよく理解している立場です。それをどのようなデザインとエンジニアリングに落とし込んでいくかを考えます。これに 対して設備設計者は、エネルギー消費の最適化を実現するため、さまざまな角度から検討を加えます。
ただ、あまりにアイデアを盛り込み過ぎると、イニシャルにお金が掛かり過ぎて、事業計画に響いてしまいます。それを避けるには、設備設計者がプロジェクトチームに最初から加わる必要があります。それが、プロジェクト成功の可否を握っていると考えています。
意匠設計者として心掛けている点はどのようなことですか。
例えオフィスビルであっても、住宅を設計するときと同じように、その空間の意味合いを主張し続けていくべきと考えています。
例えば窓。外部の熱負荷を受けやすい窓をなくし、LED照明でオフィス内の照度を確保すれば、エネルギー消費だけを見れば最小化できるかもしれませ ん。窓の必要性はエネルギーの観点だけで言えば薄れていると言えます。
しかし、頭脳労働のワーカーにとって眺望や自然採光の必要性は計り知れません。エネルギー性能だけでは建築空間は評価できないのです。
今後、さらに上の水準を目指すには何が必要とお考えですか。
ライフサイクルでエネルギー消費を最小化するには、設計段階だけでなく、運用段階のエネルギーマネジメントが不可欠です。自社ビルを複数保有するクライアントから「全ての設備を情報通信技術(ICT)でモニタリングできないか」と問われたり、ライフサイクルの中で省エネ改修を提案したりする事例も増えています。私たちがお役に立てる場面がもっとあるのではないかと思います。