まず断熱性能
意匠設計者との間でせめぎ合いが生じることもあると思います。
あります。省エネの観点では、均一につくられてきたオフィスビルで照度や温度の設定を場所によって変える発想があっていいはずです。デスク、会議室、廊下…と場所ごとに適正な数値を追い求めるわけです。ただ、そうすると、オフィスのレイアウトに制約が生じることになります。
意匠設計との関係の中でどのように環境をつくるのかという点が課題です。場の目的に応じたつくり方があるのではないか、と考えています。
意匠設計者とのコラボレーションをうまく進める秘訣は何ですか。
目標の共有です。建築主も含め、どの程度の省エネ性能を目指すのかという点を共 有できていないと、互いの理解に至りません。
その点、最近では環境配慮への提案を検討するなかで、BELS(ベルス)(建築物省エネルギー性能表示制度)やCASBEE(キャスビー)(建築環境総合性能評価システム)を利用することで、共有できる目標を定めやすくなりました。
運用段階でのエネルギーマネジメントをどう捉えていますか。
省エネ建築にとってとても重要です。消費エネルギーに関して実測値と設計段階のシミュレーション結果を比べて実測値が上回る場合は、対策を示します。
それに関連していま注目しているのは、気流や温熱の専門家がそのシミュレーションを新事業として起業する動きです。「CFD(数値流体力学)解析」と呼ばれる手法が普及するなど、解析技術も向上してきています。
省エネ基準を上回る性能の確保を目指そうとする場合、どのような方策が考えられますか。
まず断熱性能を中心に検討し、建築主の要望に従って設備面での手法を提案するのが良いと考えています。断熱性能の確保は設備面での手法に比べ費用対効果が高く、5年ほどで投資回収が可能で、投資がムダになりません。