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無断熱でもなんとかなる?

 改修工事に際し、発注者が断熱改修の予算を組んでおらず入札要件にも入れていなければ、受注者はエアコンだけでなんとかするしかない。そして無断熱の外皮であっても、日本の高性能なエアコンと優れた技術力があれば、なんとかなってしまう。

 発注者の要求を満たすために、受注者はより多くのエアコン、より高出力のエアコンを駆使した解決策を提案するだろう。そして膨大な税金が過剰なエアコンに注ぎ込まれ、毎年多額の光熱費をかけてペラペラ・スカスカの外皮から冷房や暖房をダダ漏れさせ続けることになる。

 仮に発注者を支援する中立的な第三者、CM(コンストラクションマネジメント)などを介在させたにしても、CMが温熱に関する知見を持ち合わせていなければ、良いエアコンを提案する受注者を選ぶだけになる。もちろん学校周辺の気象状況や教室の温熱環境などを調査して検討するはずだが、外皮の断熱性能は既存のまま規定条件となる。受注者を評価するポイントは、どのようなエアコンを、いくらで、いつ、どのように設置するか――になる。

 学校へのエアコン設置は世論の後押しもあり、推進しやすいのかもしれない。しかし、その場しのぎの感が否めない。国や自治体は、予算を組む前に、入札する前に、エアコンありきの改修を再考し、断熱改修に取り組む必要があるのではないか。

 文部科学省は国や自治体の厳しい財政状況の下、学校施設の老朽化対策として、従来のように建築後40年程度で建て替えるのではなく「長寿命化改修」に重点を移す方針を示している。長寿命化改修とは、建物全体の物理的な不具合を直し、建物の耐久性を高めることに加え、建物の機能や性能を現在の学校が求められている水準まで引き上げる改修を指す。

長寿命化改修のイメージ(資料:文部科学省)
長寿命化改修のイメージ(資料:文部科学省)
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 エアコンありきの改修は、長寿命化改修とはいえないだろう。

 断熱改修は大規模な工事になるので、予算を組んでおく必要がある。本来なら工事部位が重なる耐震改修と同時に行うと費用対効果が見込めたのだが、学校施設の耐震改修はほぼ完了している。

 エアコンは断熱改修と併せて設置工事ができればベスト。しかし、場合によっては断熱改修の後でも構わない。将来のエアコン設置を見込んだ設計・施工にしておけばいいだけだ。

 年度予算に応じて階や教室など工事範囲を分割する方法もある。断熱改修の有無で温熱環境の違いを体感できるようにすれば、子どもたちが省エネを学ぶ格好の場にもなる。

 いずれにしても改修の優先順位は、「(1)断熱改修」→「(2)エアコン設置」だ。教室の温熱環境の改善効果、イニシャルコストとランニングコストのパフォーマンスを合わせて考えれば、断熱改修は後回しにすべきではない。