補助金がなくなったらどうする?
その後は顧客にZEBを提案していますか。
安井 自社ビルを建てる顧客にはほぼ提案しています。ZEBは省エネの「モノサシ」が分かりやすいことに加えて、補助金を得られるのがメリットです。イニシャルコストが高くなっても補助金である程度は賄えます。性能が高まる一方で、ランニングコストが下がるという点は魅力的といえます。
ただ、申し込んだ補助金が実際にもらえるかどうかは提案時には分かりません。契約では、補助事業に採択された場合は太陽光発電設備をどの程度設置し、採択されなかった場合はどの程度に抑えるか、という形にして、顧客にも納得してもらっています。
金原 太陽光発電することでランニングコストがどれだけ下がるかを想定した提案はありがたい。同時に、補助金を得られるかどうかは事業性を考えるうえで非常に重要なポイントになります。
小野寺 設計側としては、補助金を申し込む場合には採択時の加点要素に力を入れた計画とし、採択される確率を高めるようにしています。
補助金がなくなったらZEBは提案しにくくなりますか。
安井 省エネやBCP(事業継続計画)は、建て主の企業にとってはもともと関心のある分野です。当社はZEBの制度がない時期からそうした提案に力を入れてきました。今後も、ZEBという言葉を使うかどうかは別として積極的にチャレンジしていきます。
金原 製造業の場合、一定規模以上の企業は環境目標を持っています。事業所や工場を建てる際には省エネやZEBの提案が評価のポイントになり、設計・施工者がその実績を問われる可能性は出てきます。
いずれにせよ、ZEBは提案ツールとして武器になるということですね。
安井 私たちは以前から省エネに関するシミュレーションを自ら手掛けてきました。外皮の断熱性能の面では、「この部位の断熱を厚くすればこの程度性能がアップする」「このコストならこのくらいの性能にできる」といった勘所がつかめています。加えて、採光の工夫や、空調や照明など設備機器の最新動向をチェックしていくことが大切になるでしょう。
重要なのは、いかにZEBのメリットを上手に説明できるか。その点、アサヒエンジニアリング社屋を手掛けられたことで、年間のエネルギー消費量を実測できるようになりました。設計時のシミュレーションと運用時のデータの違いも把握でき、ZEBの価値をより伝えやすくなっています。これはありがたいことです。