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「空気感が違う」

入居後の状況はいかがですか。

島村 建物の基本的な使い方は既存の施設と同じですが、無駄なエネルギーの使い方をできるだけしないよう意識してきました。まだ厳密な検証はしていませんが、この拠点の施設全体で使う電気料金はアミスタ五所川原を建設した前後でほとんど変わっていません。2019年7月、既存の施設に設置している太陽光発電システムとつなげて余剰電力を使えるようにした効果もあると思います。

鳴海 孝寿氏(拓心会さかえホームヘルパー派遣センター管理者) 太陽光発電システムとつないだ後、11月末からBEMS(ビルエネルギー管理システム)による計測を再開しました。冬に最大デマンドが発生するのではと想定していますが、1年を通してデータを集めてから運用面での軽減策を検討することになります。

島村 廊下のエアコンは24時間稼働させており、夜は若干設定温度を落とすようにしています。職員の多くは、よほど吹雪の日でもない限り年間を通して半袖で働いています。あくまで個人的な感覚ですが、新しい建物では空気感が今までと違い、快適で働きやすい印象を受けています。

鳴海 遮音性も高いので、室内にいると外の音があまり聞こえません。

島村 高齢者が暮らす個室には個別のルームエアコンを設置して、入居者が自分でオンオフして使います。夏の冷房に使うことが多いようですね。高齢の入居者はストーブのように直接火が見えないエアコンを稼働させても「寒い」と訴えることが多いのですが、ここではそうした声は聞きません。

 熱交換型換気でない場合は換気とともに外気が入ってくるため、室温の変動が大きくなりがちです。今回は断熱性を高めた上で熱交換型換気を採用しているので、室温の変動が少ない状況になっているといえます。

今後もZEBに積極的に取り組む計画はありますか。

島村 施設を建設する際に良い補助制度にめぐり合えば、事業規模と費用対効果を勘案しながら前向きに検討したいと思います。

 ただ、現在は高齢者事業に大きなニーズがあり人手不足の状態ですが、青森県では高齢者の人口ピークは25年ごろに来るといわれています。今後の需要を見極めながら新しい事業を検討していくことになるでしょう。

右から島村美由紀・拓心会理事長、山下弘光・川村建匠常務取締役、三上秀昭・秀建築設計事務所代表取締役、諏訪尚平・同設計チーフ、神幸史・神建築設備設計事務所(写真:守山久子)
右から島村美由紀・拓心会理事長、山下弘光・川村建匠常務取締役、三上秀昭・秀建築設計事務所代表取締役、諏訪尚平・同設計チーフ、神幸史・神建築設備設計事務所(写真:守山久子)
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