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費用をかけず快適に

 空気循環の面でも工夫した。

 3層吹き抜けのホール上部には、重力換気による自然排熱用の窓を設けた。また室温を平準化させるために、吹き抜けの上部と1階の床面に空気の給排気口を設け、床下に置いた1台のファンで吹き抜け回りの空気を循環させている。夏は床面から冷たい空気を吸い込み上側で吹き出す。冬はファンの動きを逆転させ、上側で暖かい空気を吸い込み床下から吹き出す仕組みだ。

 建物内に取り入れる外気は、基礎断熱した床下にまず引き入れている。夏、室内に送り込む空気の温度を下げて、空調機の負荷を低減させるのが狙いだ。19年7月のある日のデータを見ると、外気温が30.3℃となり屋根の外表面は約45℃に上がったが、基礎内部はほぼ25℃と一定に保たれた。「費用をかけずに、外気温を5~8℃程度下げて室内に供給できている」(河辺氏)

 このほか、計画の目玉の1つとなったのがCLTの採用だ。屋根全面にCLTのパネルを敷き詰めたほか、ホールに面した階段回りに高さ約9mのCLT壁を設置した。

 CLTを使うとコストは高くなるが、木材を扱う企業グループとしての象徴的な意味合いがある。今回利用した環境省の補助金「ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」は、CLTの導入によって採択されやすくなるメリットもあった。また使用した15cm厚さのCLTの断熱性は、換算すると10kg品グラスウールの6cm程度の厚さに相当する。計算には組み込んでいないが、付加的な断熱効果も期待している。

 19年春に入居。夏を体験したが、エアコンなしでも室温が30℃を超えることはなかったという。

 光熱費の削減効果も大きい。以前入居していたビルでは、使用床面積313m2に対して18年6月の電気代が13万331円だった。新本社に移転した19年6月の電気代は、床面積が500m2近くに増えたにもかかわらず半分以下の6万1555円。目に見える効果を得ている。

 加藤設計は、年間を通じて躯体(くたい)の内外など各ポイントでの温度計測を続けている。断熱効果を数値で示すことで、運用の改善に結び付けるほか、今後の設計提案にも活用する。

ザイソウ正木ビルの建築概要データ

  • ●所在地:名古屋市中区
  • ●地域区分:6地域
  • ●建物用途:事務所等
  • ●構造・階数:木造・地上3階建て
  • ●延べ面積: 493m2
  • ●発注者:材惣DMBホールディングス
  • ●設計者:加藤設計
  • ●施工者:ザイソウハウス
  • ●完成:2019年4月
ザイソウ正木ビルのZEBデータ。オーナーの濱木屋は材惣DMBホールディングスのグループ会社。その後の組織改編で材惣DMBホールディングスに吸収された(資料:環境共創イニシアチブ)
ザイソウ正木ビルのZEBデータ。オーナーの濱木屋は材惣DMBホールディングスのグループ会社。その後の組織改編で材惣DMBホールディングスに吸収された(資料:環境共創イニシアチブ)
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