建築、設備、構造の対話がより重要に
設計を進めるうえではZEB化の難しさはありましたか。
吉田航氏(久慈設計建築設計部主任主査) 住宅とは違い、熱源ひとつをとっても設備の種類が多様です。建築と設備の担当者同士がキャッチボールしながら設計を進めました。
ZEB化の大前提となる外皮の断熱性能の向上については、住宅の断熱等性能等級4に該当するUA値を目標とし、同等の性能を確保する仕様を設定しました。その設計内容を設備担当者に渡して、熱源をどうするかを検討する。仮に性能が足りなかった場合には、断熱性能を高めるのか、設備の出力を下げるのか――といったやりとりをしました。
志田 ZEBの設計では建築、設備、構造の担当者が「こうしたい」「ああしたい」と積極的に対話していくことが大切です。いつもなら建築設計がほぼ決まった段階で設備設計が加わりますが、今回はプランの検討時点から参画し、通常の倍以上の時間をかけて打ち合わせました。省エネ計算も基本計画から並行して着手し、合わせると4、5回は計算しました。
施工監理も大変だったのでしょうか。
吉田 記録を残す手間は従来と変わりありません。記録をアウトプットする手間はかかるかもしれませんが、常に記録を求められる公共工事を手掛けている施工会社ならそれほど影響はないと思います。
私たち設計者の立場から言えば、今回ZEBを手掛けたことで様々なエビデンスが残りました。これらを生かして次の提案につなげていきたいです。