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適合義務を300㎡以上に拡大

300m2未満の小規模非住宅・住宅では適合義務化が見送られましたが、新たに「説明義務」を課すことになりました。

 委員会の議論で中心となったのは、戸建て住宅をどう扱うかです。300m2未満の小規模な住宅の年間着工棟数は42万9098棟で、新築全体の84%を占めています。一方、省エネ基準を満たす住宅は6割程度に過ぎません。

 基準を達成できていない4割を、いかにレベルアップさせるのか。そのためにはまず建築主に省エネの重要性を理解してもらうことが大切だと考え、建築士から建築主への説明義務を導入しました。最終的に省エネ基準を満たさない場合にも、設計時に建築士が建築主へ説明することを求めています。

住宅の4割は基準不適合
住宅の4割は基準不適合
▶届出制度によるデータや国土交通省が実施したアンケート結果に基づき面積ベースで算定。共同住宅については、届出制度において住棟単位で提出される省エネ計画書が1住戸でも基準に不適合の場合は当該計画書が基準不適合となり指示・命令の対象となることを踏まえ、計画書(住棟)ごとの省エネ基準への適否に基づき適合率を算定している。住戸ごとの省エネ基準への適否に基づき適合率を算定すると、大規模住宅は74%、中規模住宅は75%
2021年4月(予定)から省エネ基準への適合義務化が始まる「中規模の非住宅建築物」では、既に91%が省エネ基準を満たす。それに対して住宅は不適合の比率が高く、規模にかかわらず約4割が省エネ基準を満たしていない。適合義務を課す大規模の非住宅建築物はデータから除外している (資料:国土交通省「改正建築物省エネ法の各措置の内容とポイント」を基に作成)
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制度上は、建築主側が不要と言った場合には説明しなくていいことになっています。

 家を建てようとするときに、建築主はまず家の広さや立地条件などが気になり、目に見えない建物の温熱性能には意識が向きにくいものです。住み始めてから住宅内の暑さ寒さに気付き、入居後のクレームにつながる場合が多いのです。建築主が「省エネはいらない」と言ったとしても、建築士はそのまま引き下がらずに省エネの重要性を伝えることが大切です。

 何を説明するのかは、現在、国土交通省が資料を準備中です。また、住宅生産団体連合会もパンフレットを公開しています。「光熱費を削減できる」「快適性が高まる」「健康になる」といった省エネ化のメリットや、断熱性能や設備の性能の向上に伴う効果などを分かりやすく図解しています。顧客説明の参考にするといいでしょう。

関係団体がつくった説明用の資料も
関係団体がつくった説明用の資料も
説明義務化に向け、住宅生産団体連合会が2018年12月に公開したパンフレット。省エネ住宅の性能に対する考え方や、省エネ化を図るメリットなどを分かりやすく図解している(資料:住宅生産団体連合会)
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