高性能が不動産評価に
今回の法改正に付随して、建物の省エネ化は進んでいくのでしょうか。
オフィスのようなB to Bの非住宅建築v物では採算性を重視するため、コスト増につながる省エネ化をためらう建築主は少なくありません。でもこの半年で潮目が変わってきていることを感じています。不動産業界でESG(環境・社会・企業統治)に対する関心が急速に高まっているのです。
海外では既に、省エネ、健康、快適性、レジリエンスなどの性能を可視化し、優れた不動産に投資する動きが目立っています。国土交通省でも「ESG不動産投資のあり方検討会」を立ち上げ、19年7月に中間取りまとめを公表しました。環境負荷が小さい不動産が、その価値を評価されるようになってきました。今後は、既存建築物を含めた評価法の確立やその活用法を議論していく必要があります。
自治体の意識はどうでしょうか。
19年9月の長崎県壱岐市を皮切りに、気候非常事態宣言を行う自治体が増えています。東京都も19年5月にゼロエミッション宣言を公表し、ZEBなどに関する目標を定めています。
こうして宣言すること自体が大きな一歩ですが、その先の道筋をどう描くかも重要です。実は、宣言をしながらも「再生可能エネルギーを使えばいいんでしょう」という意識でいる人が少なくありません。建物の断熱性能を向上させる、日射をコントロールする、効率のいい適切な設備機器を選ぶなどの重要性をもっと周知する必要があります。
建物自体の性能向上へとつなげていかなければいけませんね。
現在、住宅を建てる際には地震や火災への対策を法で規制しています。同様に、省エネ性能について規制できるのかは以前から議論されてきました。国民は「住む権利」を有しているため、お金に余裕がなく省エネ性能の低い家に住まざるを得ない人に規制を課すのは難しいという考え方があるのです。
しかし近年は地球温暖化が気候災害を引き起こすなど、エネルギー消費が地震や火災と同じように周囲に影響を及ぼしています。省エネが、耐震性や防火性の次にくる性能とみなされていくことを期待しています。