高性能化で自由度増す
説明義務化は意匠設計者にとってプラスになるでしょうか。
私は内部も外部もしっかり設計して、内部と外部がつながっていく空間づくりを心掛けています。季節がいい時は窓を積極的に開ける住まいです。断熱性能や気密性能が高まれば暑さや寒さがしのぎやすくなり、そうした開放的なプランの欠点を補ってくれる。むしろ設計が自由になったと感じています。
省エネルギー基準地域区分の5地域や6地域といった温暖地であれば、G2グレードは比較的容易にクリアできる。実際に手掛けてみて、そうしたことも分かってきました。性能に関する説明が義務となれば、その意味するところを説明者側が理解しておく必要があり、知識をアップデートする中で新しい気付きもあるのではないでしょうか。
我々、建築家が建て主に求められているのは、1円でもエネルギーコストを下げたいとか、そういうことではないはずです。温熱性能としては少し不利だけど、こっちの方が住まいとして素敵ですよ、暮らし方でカバーできますよ──。そんなコミュニケーションのきっかけになるといいですね。
【里山の平屋暮らし】構造/木造在来工法 階数/地上2階 建築面積/109.43m2 施工面積/132.00m2 延べ面積/120.43m2 1階床面積/102.26m2 2階床面積/18.17m2 主たる居室の面積/39.66m2 その他の居室の面積/26.03m2 非居室の面積/79.32m2 設計者/伊礼智設計室 施工者/柴木材店 温熱コンサルタント/東京大学 大学院前真之研究室(劉行、大平豪士、山本遼子、溝口暉人) 完成/2019年6月